第18章 白日の中で待つ【END1】
少年は、父の神楽が戦いに応用できたと、ヒノカミというが、それについて何か知っていることがあれば教えてほしいと尋ねてきた。
炎の呼吸に関係しそうだと思ったのだろう。
俺は何も知らぬ故、答えられなかったがな。
だがそうならば継ぐ子にして面倒を見てやれば、何か分かるのかもしれないと思った。
この任務を終えたら早速、継ぐ子として鍛錬してやろう。
鬼を連れているが少年は素直でいい子そうだ。
鬼舞辻を滅ぼす心持ちも充分。
楽しみができたのも束の間。
車内で鬼の襲撃にあった。
40人以上食ったようには見えない鬼だったが、それは夢の中のできごとだと分かったのは、既に列車全体に敵の手が回った後だった。
よもやよもやだ…。
任務の最中にうたた寝し、その間にこんな事態になるとは…!
そこら中に鬼の触手が伸びていて、眠る乗客を食わんとしている。
この列車自体が鬼の腹の中というわけだ。
列車は8両。守りながら頸を探して斬るのは一人では厳しい。
かと言ってあの少年たちでは車内で刀を振るうのも危ない。
俺は先頭客車まで細かな斬撃を入れながら突き進んだ。
途中で黄色い少年と竈門妹とすれ違った。彼らは乗客を守るために戦っていた。
竈門妹は傷つき血を流していたが、それでも必死に爪を立てていた。
確かに、あの子なら鬼殺隊のいち員として戦える。重要な戦力となるだろう。
竈門少年は随分前の車両で、どうにか持ちこたえていた。
ある程度状況は把握しているのだろう。
猪頭少年と共に客車3両に注意しつつ、鬼の頸を探して斬るように指示を出した。
それから後方車両に戻りながら猪頭少年にも竈門少年と同じ指示を出し、黄色い少年と竈門妹は、聞いているのかわからないが前方3両を守れと伝えた。
…伝わったとは思う。竈門妹は頷いていたからな。
あとは彼らが鬼の頸斬るまで持ちこたえるのみ。
後方車両5両を行ったり来たりして、前方3両に注意を払いながら。
誰も傷つけられることがないように。
やがて数刻もしないうちに、断末魔と共に車両が生き物のように飛び跳ねた。
このままでは脱線する。技の衝撃波で少しでも食い止められるか。
ここまで守れたのだ。死者は一人も出させない…!
鬼のせいで命が断たれることはあってはならない。
何人たりとも。