第18章 白日の中で待つ【END1】
思わず振り返ると、千寿郎が心配そうに大丈夫かと聞いてきた。
千寿郎は式台に立っている。俺は敷居の外にいる。手を伸ばして届く距離ではない。
なんとなく、月城が背中を押したような気がした。
そうだ、俺がしっかりしなくては。
「大丈夫だ。いってくる!」
何か少し気が晴れたようだった。
それが千寿郎にも伝わったのだろう。見送る声に元気が出ていた。
月城はきっと今でも俺たちを見守っているだろう。
あちらで、弟たちに俺のことを話すのだろうか。
だとしたら情けない男とは思われぬよう、振るわなくてはならんな。
心配をかけぬよう、立派に責務を果たしてみせよう。
ただひたすらに言い聞かせ、己を鼓舞した。
鼓舞し続けた。
やがて柱の人数は増えて九人となった。
お館様が言うには鬼殺隊始まって以来の精鋭とのこと。
俺も、この者たちとならきっと鬼舞辻を討ち滅ぼすことができると信じている。
さらに前期柱合会議には、鬼を連れた少年の隊士まで現れた。
信じられない。
鬼が人を食わず、味方するなど。
鬼は少年の妹なのだとか。
最初は許しがたいものがあった。
いくら身内であっても、家族を襲う鬼はいくらでもいる。襲いかかり、死んでしまってからでは遅い。
不死川が鬼の本性を示すべく自傷までしてみせた。
だが、少年の連れた鬼は食わなかった。
目の前で血を垂らした人間の腕があっても、我慢していた。
時代は変わるのだ。
この少年は入隊して間もないというのに、鬼舞辻との接触もある。
事態は動き出している。
さらなる変化をどこかで予感していた。
そして、それは予感ではなくなる。
俺は任務のため無限列車に乗車していた。
この列車では40人以上が行方不明となっている報告があがっている。何人か隊士に調査を依頼したが、消息を断ってしまった。
まず鬼の仕業なのは間違いない。
そして、同じ列車になんと、あの鬼を連れた少年が来た。
俺に聞きたいことがあると。
名を竈門というそうだ。
彼は黄色い少年と猪頭の少年を連れていた。
鬼は竈門少年の背負う箱に入っていた。