第18章 白日の中で待つ【END1】
だがこそばゆくなって書けなかった。
直接会ったときこそ伝えよう。それまでに心の準備をしておこう。
その晩は担当地区警備が主だったが、正直言って気持ちは浮かれていた。
任務は任務なのでいつも通りにこなし、空いた時間で後輩たちへ指導もした。
いつもと変わらない一日ではあるが、手紙を貰う前と後では心持ちが違う。
全く違う自分になったようだった。
とくに問題なく朝を迎えた。
一旦藤の家に戻る。
起きて彼女からの連絡を待ちたいが寝れる時に眠っておかねば身体が保たない。
あののんびりとした鎹梟に起こされるのを楽しみに、眠りについた。
昼前には目が覚めた。
起こされたわけではない。普通に目覚めた。
さすがに昨日の今日というわけにはいかないか…。
藤の家で朝餉をもらい、夜に備えて鍛錬をした。
月城のことだ。今回の任務も早く終えることだろう。
彼女は頭の回転が早く、知識も豊富だ。
明日、明後日には会えるな、きっと。
それがこれまでの日常だったのだから。
だがこれがおかしなことに、2日経って3日が経って、それでも音沙汰なかった。
手間取っているのだろうか…。加勢に向かうべきか。
しかし独断で向かうわけにはいかない。
かと言ってお館様へ確認を入れるのもおかしな話。
要は確かに手紙を渡してくれたはずだ。
いや、まだ3日だ。急ぐこともない。彼女はいつも立て続けの任務で忙しい。今度の任務が終わったらというのも、一つの任務が終わったらという意味とは限らない。
俺は月城に会いたくて気が急っているのだ。
何かうまいものでも食べて気を紛らわすか。
昼過ぎ、町を一人で歩いた。
食事処で賑わう通りだ。この時間は人が多い。
と、要が降りてきた。
俺のすぐ足元で見上げてくる。
「どうした?」
腕を差し出すと飛び乗ってきて、俺をじっと見つめる。
頭を撫でてやると目を閉じた。
「どうした要。」
要は目を開けてもう一度俺を見る。
様子が変だ。
『杏寿郎様……』
「ん?」
要はゆっくりと言葉を、丁寧に紡ぐように発した。
『月城リアネ。鬼ニ破レ死亡。』
頭の中が真っ白になった。