第18章 白日の中で待つ【END1】
父は私の行方が分からなくなり、心労で亡くなりました。私は私の選択で全て無くしてしまいました。だから、もうこの命は捨ててしまおうと思ったのです。
でもできなかった。自分で命を絶つこともできず、いつも誰かに助けられて今があります。
貴方もその一人です。杏寿郎さんの大きな太陽のような温かさに、どれだけ照らしてもらったことか…。
千寿郎さんの小さな太陽のような優しさに、どれだけ癒やされたか…。
お二人にはとても感謝しています。一緒に過ごした日々は私にとってもかけがえのない日々に違いありません。ー
ここまで読んで、先を見るのが怖くなった。
それでも読まなければ…。
ー先日話した通り、私の入隊理由は、自分の死です。この世は辛いことが多すぎます。家族も友人もいない私にはもうこの世に残る理由が見つけられませんでした。だけれど、鬼と出くわしても恐怖故に刀を振り、元より備わっていた数字が見えるこの目で任務を完遂してきました。そうして生き延びるうちに、貴方に出会ったのです。貴方に鍛えていただき、力が付いてくるとそこには喜びがありました。貴方との鍛錬は、正直とても辛かったですが、それでもやりがいがあって、一緒にいると私も強くなれた気がして、勇気が湧いてきたのです。
それからは死を意識することは殆どなくなりました。杏寿郎さんも千寿郎さんも、私にとって大切な御人です。それなのに、私はまた逃げてしまいました。自分の不甲斐なさに耐えかねて、逃げ出して、貴方を傷つけてしまった。私の父の時と同じように。
昨年末にお会いしたときは、私も自分が何をしたいのかよくわかりませんでした。そんなときに大切な人と向き合わず逃げ出すのは私の悪い癖だと気が付きました。
時間をこれだけかけて出した答えですが…ー
手紙を持つ手に力が入る。
ーこんな私ですが、貴方と共に生きたいです。ー
このたった一文で
俺の心は解放された。
俺はずっとそう思っていた。
だが君は違うかもしれないと、もしもの時の為に思い込ませた。
手紙の続きを読もう。
ー何度も考えました。家族を失った原因を作ったのは私。そんな人間が好きな人と幸せに暮らすなんて、おかしいのではないかと。だけどある時、父と母に言われたことを思い出しました。