第18章 白日の中で待つ【END1】
「あ、すみません。私ばかり喋ってしまって…」
「気にするな!甘露寺の話を聞きにきたのだからな!」
甘露寺はまだ何か言いたげに視線を泳がせた。
本題は終わったのだとは思うが…。
「どうした?」
「あの…」
甘露寺は最後まで言葉にするのを悩んだのだろう。随分と溜めてたから月城はどうしているのかと聞いてきた。
手紙が途絶えてしまい、連絡がつかないと。
俺だけではなかったか。
甘露寺は知っているのだし、下手に誤魔化してややこしくなっても困るので正直に伝えた。
月城が距離を置く理由までは彼女のことなので伏せた。
多く語らずとも甘露寺は察してくれる。
「そうなんですね…。でもきっと月城さんならまた戻ってきてくれますよ!」
甘露寺は胸の前で拳を強く握る。俺を元気付けようとして。
「うむ!ありがとう甘露寺!」
『ホー』
「…ん?」
少々間の抜けた返事が聞こえたかと思えば、いつの間にか俺と甘露寺の間に梟が鎮座していた。
甘露寺が驚いて体を仰け反らせていた。音も無かったからな。
そしてこの梟、手紙を咥えている。
「月城の梟か!!」
大きな声を上げたため鎹梟は目を丸くした。それから俺の膝に手紙を置き、すぐに飛び去った。
手紙の差出人には彼女の名前。宛名は俺だ。
「月城さんからですか?」
体勢を持ち直した甘露寺が俺の顔を覗きこむ。
「あぁ。」
少し開けるのが怖いとさえ思う。だが封を開けた。
便箋は2枚。びっしり書かれている。
思わず唾を飲んだ。
ー前略
杏寿郎さん、お元気でしょうか。
長らく返事もせず、申し訳ございません。
どうか無礼をお許しください。そして、お忙しい中、この手紙を開いていただきありがとうございます。
この数ヶ月、いくつも任務を対応して参りました。
守れた命があれば、こぼれてしまう命がありました。死に対してはいつだって恐怖が付き纏います。
亡くなってしまった人を見ると、思い出すのは家族のことです。
過去に戻れるならば、あの日、母と弟を亡くした日に、父と出かける約束を取り消したい。
私の選択一つで全て台無しにしたと、ずっと思っていました。そして、孤独に耐えられなくなった私は、父を見捨てた。
後先のことはあまり考えずに、心を無くし身体の動くままに行動してしまった。