第18章 白日の中で待つ【END1】
暫し談笑の後、俺たちは店を出た。伊黒は結局何も食べなかった。
別れ際、宇髄は肩を軽く叩いてきて「まぁ気楽にいこう。」と言ってくれた。待つ他に手立てはないのだから、ここで焦ったところで仕方がない。
「うむ、ありがとう!」
「じゃあな〜」
それぞれに別れ、担当の警備地区へと戻る。
いつもと変わらない日々だ。やることも変わらない。見回り、情報を集め、鬼を狩る。
だがふとした瞬間、彼女を思い出してはどうしているかと考えこんでしまう。
考えたってどうしようもないのに、考えてしまう。
ただ一言でも言葉を交わせたなら。
ただ一言の手紙だけでももらえたら。
もう少し違っていたのだろうか。
分からない。
考えるな。
それしかない。
毎日のように言い聞かせ、あっという間に数ヶ月の時が経った。
その日は珍しく甘露寺から誘いがあって茶屋に来ていた。
春も近づく温かな昼下り。
「なんと!?柱に!?」
「煉獄さん!声が大きいですー…」
甘露寺は恥ずかしそうに周りを見ながら言った。
どうやら柱の候補として名前が挙がったようだ。優秀だとはもちろん分かっていたが、これほど早く柱に上り詰めようとしているとは、嬉しいかぎり。
「短期間でよく成果を上げたな!流石は甘露寺だ!」
「煉獄さんのご指導の賜物ですよ〜。」
「いや、君の努力が結んだ結果!俺はきっかけをつくったにすぎない。実にめでたいな!」
「あ、でも実はまだ迷っていまして…」
甘露寺は俯きながらも打ち明けてくれた。
自分が柱として本当に務まるのか、自信がないと。
「お館様がお認めになられたなら、それが間違いであることはないのだから心配はいらない。」
かつての弟子の頭を撫でて励ます。妹のようなところは今も変わらない。
甘露寺のすぐに頰を染めるところも前から変わらないな。
「そうですね!お館様に認めてもらえたら、期待に応えられるよう励むのみですね!」
「うむ!柱になれば、いざとなれば後輩を守ることも必要だが、やることに変わりはない。まあ…忙しいがな!!」
「そうですね、でも私頑張ります!」
「その意気だ!」
肩をポンと叩けば甘露寺はまた頰を染めた。本人曰くキュンとしやすいらしい。