第18章 白日の中で待つ【END1】
また数日が経った。
残念ながら大晦日も正月も俺は家には帰れず、担当地区の警備強化にあたる。
すべての人々にとって大切な日だから、何も起きぬように目を光らせた。
おかげで千寿郎には寂しい思いをさせてしまったが。
俺がいないのを知ってか月城は顔を出しにきたようだ。
手紙での連絡は途絶え、千寿郎を通して様子を聞くも、年明けに1度来たきりで、それ以降は音沙汰なくなった。
黙って家に帰り、会えたならとも思うが、彼女は居なかった。
手紙を送ってもみたが返事もない。
「そいつは辛いなぁ。」
たまたま顔を合わせた宇髄に食事を誘われ、時間もあったのでそのことを話した。
妻が三人もいれば、どうすれば良いか知っているのではと思ったが。
「あまりしつこく追うのは逆効果だ。この場合はとくにな。別に嫌いになったわけでもないんだろうし、待つしかない。」
「…やはりそれしかないか。」
わかってはいるものの、無事かどうかも分からないとなると心配でたまらない。
千寿郎からの連絡を待つのも辛かった。
だが仕方ない。彼女の問題は彼女にしか解決できない。
「しつこく追っているつもりはないが、彼女がそう思って更に思い詰めてしまったら本末転倒だ。」
まるで自分に言い聞かせているようだった。
そんな俺を見て宇髄は「痛々しい」と笑った。べつにどこも痛くはないんだがな。
「とはいえ、心配は止まないな。あの時の彼女、今にも死に向かって行きそうだと思った…」
「そればっかりはな…。死んで欲しくないと思うのは当然だが、生きるも死ぬも決めていいのは本人だけだ。ただでさえ鬼殺なんてことやってんだからよ。そこは腹くくっておけ。」
宇髄の言うとおりだ。俺は、彼女の命も自分のものだと勘違いしている。どうか死に向かわないでほしい。そう願うのは、彼女の意思を否定することになるだろうか。
あまりそこまでは考えていたくないな。
ああ、会いたい。君に。
脳裏で月城の姿を思い浮かべようとしたとき、店の戸が開いて客が一人入ってきたのは見ずとも分かった。
「あ、伊黒〜!」
宇髄が呼ぶので俺も背後を振り向く。
確かに、縞模様の羽織りを着て首元に白蛇を巻き付けた彼がいた。
「なんだお前たち。柱が揃ってさぼっているのか。」