第16章 鬼殺隊である意味
「通り魔だとしか聞いていませんでしたから。でもその後に、鬼に家族を奪われた人の話を聞いていたら、もしかしたらうちもと思っただけです。」
本当だったのだ。知りたかったような知りたくなかったような。
弟たちはとても怖い思いをして死んだのだろう。
母は必死で守ろうとしたのだろう。
一体どれほどの恐怖の中で…。
「あの日…私は父と二人で遊びに行こうと約束をしていました。仕事であまり家にいない父を独り占めできる機会だったのです。…私が。そんなことを思わなければ……。」
声は震えるのに涙は出なかった。どうして。
「私が父と約束をしなければ、母たちが殺されることはなかったのです。」
小さい弟たちまで巻き込んでしまった…。
「みな、私が悪いのです。我儘を言ったので天罰が下った…」
「それは違う。」
まるで遮るように槇寿郎さんは言った。どうして違うの?
「全て鬼が存在することが悪い。誰のせいでもない。」
槇寿郎さんはいつもの気怠そうにな顔ではなくて、真っ直ぐ私を見ていた。
それがどこか私の父を彷彿させる。
父は私の目を真っ直ぐみて話す人だった。
「親父さんは息災か?」
「…いいえ…。」
そんな父を
残された唯一の家族を
「数年前に他界しました…」
私は見捨てた…。
「…そうか。」
槇寿郎さんはそれ以上話すことも、何かを聞いてくることもなかった。
ただ黙って俯いたままの私を、独りにすることなくそこに座っていた。
最初の質問がまた蘇る。
今度は綺麗な答えはだせないだろう。
さっさと死んで家族に会いたい。
どうせ死ぬなら人の役に立ちたい。
そうすれば父を見捨てて逃げた私のことも皆許してくれるかもしれない。
なんて都合がいいんだろう。
世のため人のために力を尽くす杏寿郎さんや、刀を振る努力を惜しまずいつか兄のようになろうと励む千寿郎さんに対して恥ずかしくなった。
私はそんな大層な想いを抱いてすらいない。
確かに鬼殺隊である意味はとくにない。
なら他に何があるか、それも分からない。
「あの、私そろそろ失礼します。千寿郎さんによろしくお伝えください。」
もうここには居られないと、感覚的に思った。
私がここにいるべきではない。
「リアネ。」