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桜月夜【鬼滅の刃】

第16章 鬼殺隊である意味


「後者は私が言ったところで聞きませんよ。母上様とのお約束もあるのですし。」

それ以前に正義感も強く優しい人だから、鬼がいることを知りながら、それを滅する力も持っていながら、自分だけ安全に暮らすなんてできないでしょう。

「お父上様の気持ちはお察し致します。」

「お前に父上と呼ばれる筋合いはない。」

「失礼いたしました。槇寿郎さん。」

槇寿郎さんは半分より減った湯呑を差し出してきたので、新しくお湯を注いでお茶を足した。

「十年以上前、関西でも鬼の報告があり、当時柱だった俺は遠征した。」

徐に始まる昔話だが真剣に聞いていた。十年以上前の関西という言葉だけで母を思い出したから。

「初めて行く土地故、探すのに苦労した。鬼の痕跡を辿っていると見つけたのは殺された家族だった。間に合わなかった。」

心臓の音がうるさいくらいに大きくなる。先を聞くのが少し怖くなった。

「母親は子供を二人抱えて守るように覆いかぶさっていたが、子諸共殺されていた。一人はちょうど当時の千寿郎と同じくらいの子供だった。他人事とは思えなかった。明日は我が身だと。妻が杏寿郎と千寿郎を守り同じように死んでしまう日がくるかもしれないと恐ろしかった。」

手が震える。怖い。

「あの家族を殺した鬼は数日の間に俺が始末した。それを残された家族の旦那の方に報告した。妻と子二人の葬儀の最中だったが、彼は礼を言いながら泣き崩れた。近くで大泣きする少女もいたから、きっと不安だったのだろう。母親と同じ金色の髪に真っ白な肌の少女だった。娘もいたのかとすぐに分かった。歳は当時の杏寿郎と同じくらいに見えたな。ますます他人事とは思えなかった。」

頭の中で記憶がぐるぐると巡る。
母たちの葬儀の中で父が誰かに呼ばれていったこと。男の人と話して泣き崩れたこと。その人は刀を持っていたこと。ぼんやりした記憶が突然鮮明に見えた。

「…覚えています。あの時、父が呼ばれて誰かと話していたこと。でも私、涙で前が見えなくて、顔をよく覚えていなくて…。」

「そうだろうな。あれほど泣いていたら…。」

「母たちは、鬼に殺されたのですね。なんとなくそうかもしれないとは、思っていたのですが…」

「てっきり知っているものかと思ったが違ったのか。」
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