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桜月夜【鬼滅の刃】

第16章 鬼殺隊である意味


居間を出ようとしたとき名前を呼ばれたので振り向いた。
槇寿郎さんはこちらを見てはいなかった。





「間に合わなくて…申し訳なかった。」



「…!」







溜まっていたものが溢れそうになった。
息を止めるようにしてそれを堪らえる。


「全ては、鬼のせいです。そうなのでしょう?」


私は返事を聞かずに煉獄家を後にした。



















その足で任務へ向かう。なんだか悲しく苦しいものが通り越して苛立ちに変化していた。
それを見つけた鬼にぶつけていた。

十二鬼月とか突然現れて私を殺していけばいいのにとも思った。もうぐちゃぐちゃだ。どうしたいのか分からない。だから任務をこなすしかなかった。

こんな姿、父と母が見たらなんて言うだろう。弟たちにはなんて言われるだろう。
想像したときになぜか杏寿郎さんと千寿郎さんが浮かんだ。
杏寿郎さん…本当に素晴らしい人だと思う。亡き母上様との約束を胸に、どんなときも強く真っ直ぐで芯のある方だ。そんな杏寿郎さんを見ているから、千寿郎さんも兄のようになると頑張れるのだろう。
私は杏寿郎さんのようでもなければ、千寿郎さんのようでもない。
このままでは死んだ後に弟たちに怒られそうだ。情けない姉だと。


私は私の生き方を見いだせないまま、凍える空気の季節がやってきた。間もなく今年が終わる。
我武者羅な働きでお給料が上がったので、新調した革の手袋をして、母の物だった襟巻きを巻いて任務にあたっていた。

槇寿郎さんとお話をしたあの日から一度も煉獄家には行っていない。
手紙は続けているので杏寿郎さんからも千寿郎さんからも来るようにお誘いいただけたが、何かと都合を作って行かなかった。


行けなかった。



会いたい気持ちはもちろんある。
むしろそちらの方がある。でも…。



そうしているうちに手紙の返事も筆が進まず遅くなっていき、ついに杏寿郎さんに避けられている気がすると言われた。

もうこれ以上は延ばせない。
杏寿郎さんを傷つけるようなことはしたくない。

次の休暇でお伺いしますと約束した。

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