第16章 鬼殺隊である意味
その翌日からすぐ私は単独任務の日々が続いた。任務と言っても偵察がほとんどで、鬼が関与していると思われる事件や噂を報告する。
ひたすら歩き、聞き込みと聞き耳を立てるだけなのでもちろん肩には負担がない。
それで時々は蝶屋敷に出向いて経過を見てもらい、数週間で完治した。
杏寿郎さんとは手紙でやりとりをしていたが、私より先に完治したらしい。あんな重症でどうやったらそれほど早く治るのか、本当に不思議。
千寿郎さんとも文通は続いており、とても心配をかけたので任務の合間に一度顔を出しに行った。
だがどうやらいらっしゃらず、珍しくお父上様が玄関まで出てきてくださった。
相変わらず着流しが崩れたまま、酒瓶片手に気怠そうにしている。
私の愛するお日様たちと顔はそっくりなのにどうしてこんなに違うのでしょう。
「千寿郎は出掛けてる。」
「左様ですか…。待っていてもよろしいでしょうか。」
「勝手にしろ。」
「ありがとうございます。」
家の中へ戻るお父上様の後に着いていく。靴を脱いでから揃えなるべく足音を立てないように歩いた。
以前は二人で家に居ることもよくあったが、毎度ながらお部屋にこもっていらっしゃることが多いので今日は気分だったのでしょうかね。
私は居間に通され日輪刀を置くと、お茶をいれる準備をした。
いれたらお部屋にお持ちしようと思ったが、これまた珍しく座って待っておられる。妙な緊張感が漂い、変な汗をかきながら急須に茶葉を入れてお湯が湧くのを待った。
「お前、階級は?」
背中から脅かされたようにビリビリとする低音の声。ちょっとだけ鬼気にも似てる。威厳と言うが正しいのでしょうけど。
「つ…戊です。」
「…そうか。」
どうしてそんなことを聞かれたのだろう。興味なんてないと思っていたのに。もしかして継子を解消されていることをご存知ないのかしら。だとしたら話をそれに合わせなければならないけれど、そんなことあるのかしら。
湧いたお湯を急須にいれて茶葉を蒸らしてから、お盆に乗せて湯呑の一緒に食卓へ運ぶ。
ゆっくりお茶を注いでからお父上様の湯呑を目の前に置いた。
お父上様は静かに頷くだけだった。今日はどうやらご機嫌が良いみたい。
でも心の数字は相変わらず低いまま。杏寿郎さんたちは、母上様が亡くなってから塞ぎ込んでしまったと言うけれど、本当はそれだけではないのでしょう。
