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桜月夜【鬼滅の刃】

第15章 暴れ馬


夕餉のあと俺と月城は早々に席を外した。あまり長いこと上官や先輩か一緒にいるのは気疲れするだろうと思ってだが、二人になれるので今日は一石二鳥!

「月城、部屋は相部屋だったか?」

「はい。食事の席で私の向かいにいた女の子と一緒でしたが…それがなにか?」

「君の部屋に行きたくとも、他の隊士がいては悪いと思ってな。俺の部屋に来てくれるか?」

「はい。では薬を飲んでから行くので待っていてもらえますか?食後に服用するよう言われていましたので。」

「分かった。」

廊下で別れ、先に部屋に戻った俺は何もすることもなかったのでただ座敷に腰を下ろした。骨折した足は固定されているので片足は伸ばしたまま。
机の上には鎹鴉からの手紙がいくつも乗っている。食事の合間にきたのだろう。柱に休む暇などほとんどない。やることは山のようにある。明日、蝶屋敷で治療をすませたら直ぐに移動しなくては。月城は残して…。
今夜の戦いをふと思い出す。
後輩を守るために身を挺して銃弾を受けた彼女。先輩として素晴らしい行動だとは思う。だが俺にとってはただ一人の大切な人であるから、無茶なことはしないでほしいとも思う。
彼女の肩から血飛沫が飛んだ瞬間、背筋がゾクゾクするような怒りがこみ上げた。頭まで血が上る前に月城が鬼を倒してくれて良かった。

「杏寿郎さん。」

月城の声がした。襖の向こうにいる。その声を聞くだけでも癒やされる。

「入れ。」

「失礼いたします。」

襖が少し開き、細く白い指が側面にかかると人一人通れるだけ襖が開かれて彼女が入ってきた。
静かに閉めて、俺の方に向き直る。

「おいで。ここに座るといい。」

俺は骨折していない方の足をぽんぽん叩いてみせるが月城は戸惑っていた。

「?…そ、そこにですか?」

「うむ!さあおいで!」

両手を広げて待っていると、月城は恥ずかしそうに躊躇いながらも、俺の傍に腰を下ろしてから足の間に入ろうとしたので、脇に手を入れて犬猫でも持ち上げるようにして支えながら横向きで足に座らせた。
嗚呼、本当に可愛らしい。俺は彼女に骨抜きだと言っても過言ではないほど溺愛していると思う。今日一日、触れたい気持ちをどれだけ堪えたことか。
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