第15章 暴れ馬
「月城さん、肩は大丈夫ですか?」
月城の向いにいる少女の隊士が言う。彼女は喜びのあまり月城に抱きついた者だ。そうか、利き手の肩を撃たれたのだから痛みで箸が使いにくいか。
「痛み止めを打ってもらいましたので大丈夫ですよ。」
そうだろうか。
俺は自分の茶碗の白米を箸で取って差し出した。
「無理はするな月城。そら、あーん!」
「…結構ですって…」
「遠慮はいらんぞ!」
月城は恥ずかしいのか頬を染め、顔の横髪を手で押さえながら大きな一口でぱくりと食べた。
…可愛らしい。
「可愛い…」
呟くように少女の隊士の隣に座る少年隊士が言ったのを聞き逃さなかった。彼に視線を向けるとすぐに目を逸らされた。確かに彼が言ったと思うのだが…まあいい。
「さぁどんどん食べるといい!」
今度は野菜の煮物を一口大に箸で割って月城の口の前へ。
「そんなに早く飲みこめないですし、本当に大丈夫ですからもう結構です。」
「そうか…。なら俺の海老天をやろう!」
「えっ!良いのですか!?」
これには分かりやすく喜ぶので誠可愛らしい。
俺は海老天を彼女の天麩羅の皿へ乗せた。
「ああ、好物だろう!」
「ありがとうございます。」
月城は直ぐに海老天を箸でとって口に運ぶ。確かに痛みは問題なさそうだった。
「月城さん、海老天がすきなのですか?」
「海老が好物でして。」
「私のもどうぞ!」
「え。」
「オレのもどうぞ!」
「あらあら。」
付近の者が皆挙って海老天を月城の皿に置いたので山積みになった。月城は申し訳無さそうに、だが本当に嬉しそうに皆に礼を言っていた。
食事の間は皆彼女を質問攻めにしていた。
上背があって西洋人寄りの顔立ちから最初は距離をとる者もいたが、話せば物腰の柔らかく優しい彼女だ。あっという間に人気者になっていた。あだ名というのか分からないが一部の隊士からは姉さんと言われるようになっていた。
まだまだ新米の隊士らから慕われる姿を見ていると、他の任務でもこのような雰囲気になるのかと想像する。
「あの、月城さん!」
「なんでしょう?」
「えっと、その…恋人とか、いるんでしょうか!」
「え?!」