第15章 暴れ馬
「撃たれたのは肩だけか?」
「…はい。弾も貫通しています。大丈夫ですよ。」
月城は何度か咳き込むが、大丈夫だとしか言わなかった。それどころか俺の傷を心配する始末。少々派手に撃たれてしまったせいだ。
「村で見聞した時に銃弾を一つ見つけたのです。殺傷能力の高い形でしたので…痛いですね。」
「…骨が砕けたからな!」
声を張ったら腹が痛んだ。
月城の前に座り込んで、なるべく動かぬように努めることにした。間もなく医療班も到着するだろう。
「たくさん撃たれてしまったのですね…」
「うむ!不甲斐ない!」
「遅くなってしまい申し訳ございませんでした。普通はこんなに撃たれたら痛みで立てないでしょうに。流石は炎柱様。」
月城は自分の肩の傷を手で押さえながら言った。痛みで顔が歪んでいる。可哀想に。俺は隊服の胸ポケットからハンケチを出して彼女の傷に押し当てた。
痛むだろうが、これで少しでも止血できればと。
「出血が多い。眠たくなっても眠るなよ、月城!」
「はい、起きてますよ。」
やがて動ける隊士が隠を連れてきた。その場で簡単な応急処置を施され、月城と支え合いながら歩いて藤の花の家紋の家を目指す。他の隊士や隠が代わりに支えとなると言ってくれたのだが断った。今はこの方が痛みも和らぐ気がするのでな。
屋敷に着いてから、再度傷の処置をしてもらった。足の粉砕骨折が治るのに時間がかかると言われたので、明日の朝には蝶屋敷に移動することになった。月城も肩に当たった銃弾が粉砕骨折を引き起こしたため共に。理由は不本意だがもう少し一緒にいられそうだ。
さて、思いの外仕事が早く片付いたので屋敷の主人が夕餉を用意してくれたそうだ。
その部屋へ案内されると、皆俺が来るのを待って箸をつけずにいた。
「すまない!待たせてしまったな!」
「いいえ、傷は大丈夫ですか?」
「うむ!」
月城の隣、上座が一つ空いていたのでそこに腰を下ろした。
蕎麦、野菜と魚の煮物、天麩羅か。美味そうだ!有り難い!
「いただくとしよう!」
皆で揃っていただきますと言うと、少年の隊士等は余程腹が減っていたのだろう、勢いのある食べっぷりだった。