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桜月夜【鬼滅の刃】

第15章 暴れ馬


技を出してもこの至近距離の発砲ではさすがに完全には避けきれないか。一度止血に集中する。
この武者は恐らく生前も強者だったのだろうと思う。

隊服の中を流れる血が生暖かい。体温が下がり始めている。腹部を先に止血したところで再び斬撃。片足で飛んで避けたが次は銃の攻撃だ、いつまで保つか…。
次の発砲に備えるが武者の動きはピタリと止んだ。頸が狙われていることに気がついたか。すると武者の周りを回る銃が散り散りに山へ飛んでいった。
銃声は直ぐに響く。見つかったか。俺は武者の注意を引くために斬り掛かったが、奴はそれを喰らいながら走り去ろうとする。
切ったところで直ぐに繋がるので足止めできない。並走していてもこちらに見向きもしなくなった。
それどころか前方めがけて刀を振るう。草木が切られ、先まで見通しが良くなると、隊士の姿が見えた。何人か撃たれたと見える。斬撃は動ける者で協力してなんとか避けたが今度は激しい発砲。月城が隊士を庇って撃たれた。血飛沫が激しい。だが深手に怯まず日輪刀を振り下ろして側にある石の塚を破壊した。


「ガァアアアアアア!」

断末魔の叫びが二つ響いた。
武者は馬と武器諸共、煙のように消え、塚からは塵が少量舞い上がった。
鬼気は消え去った。
暫し呼吸を整えるために皆沈黙したが、やがて隊士たちは互いに抱き合って喜んだ。

「倒したー!」

「良かったぁ…!」

「やりました月城さん!お見事です!」

少女の隊士が月城に抱きつくと他の隊士まで次々と抱き着いていた。重みに耐えきれずその場に尻をつく。

「やりましたねえ。皆さん頑張りましたね。」

まるで姉が弟や妹を褒めるように月城は届く範囲にいる隊士の頭を一人ずつ撫でていた。ちょっとだけ羨ましいが我慢する。

「皆よくやった!」

「炎柱!ありがとうございました!」

「煉獄様のご活躍のおかけです!」

「本当に、炎柱様が食い止めてくださったおかげです。」

最後、月城は言葉を続けようとしたが自らの咳でそれが遮られた。そうだ、抱きついた隊士で見えないが撃たれたはず。

「大丈夫か!」

「月城さん、出血が…」

少女の隊士が言うのでその間を割って入り、屈んで怪我の位置をよく確認した。
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