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桜月夜【鬼滅の刃】

第15章 暴れ馬


素早く燃え進み、遠くに置いた爆竹がすぐに破裂した。
皆より遠くにいるがすごい破裂音だ。顔の横を何かが一瞬飛んでいったが、これは中身か?

上手くいったようで月城が大きく腕を振り下ろして親指を立てていた。彼女もそんなことをするのだな。

その後も入念に微調整をしてから仕掛けを設置した。散弾物の飛距離が意外とあったので、確実に人が離れてから火をつけられるように逃げ道を確認し合い、隊士が抱える不安なところもなるべく払拭しようと月城の真剣に話を伺う姿がよく見られた。
少し前まではすぐ逃げ腰だった彼女が、逞しくなったな。上官として嬉しい反面、無理をして怪我などしないかという心配もある。


「杏寿郎さん。」

「ん!?」

他の隊士と離れているとはいえ、急に呼ばれると心臓に悪い。月城が何か含みを持った笑みで傍にいた。

「なんだ!」

「さあさあ、準備をしてくださいね。お召し物はご用意いただいたのですよ。」

月城は俺の体をくるりと反対へ向けて背をぐいぐいと押しやって屋敷へ連れこもうとする。
部屋に通されると、白い着物と帯が畳まれていた。
囮役の準備か!

「隊服の上から着ますからね。羽織は脱いでください。」

月城は言いながら着物を広げて俺に袖を通そうと待っているので直ぐに羽織を脱いで畳んだ。
後ろから片方ずつ袖を通し、整えながら衿元を左前にした。
生贄は死装束で向かうらしい。

「ここを押さえてもらえます?」

言われたとおりに着物を押えると帯を後ろに通して巻いていく。腰に抱き着いているように見えてもどかしい。
中の隊服が見えぬように衿元は俺が貸していた襟巻きで隠された。

「さあ、良いですよ。」


それぞれ準備を整え終わり、屋敷の外へ集まった。

「みな準備は良いな?!」

「いいですが…炎柱…本当によろしいのですか?」

骨を折った隊士がまだ言っているな。

「どうだ!様になるだろう!」

「いや、そんなお元気そうに死装束でいられても…」

そうか、生贄になるのだからもう少し悲しくならないといけないか。

「そうですね、生贄なのでもう少ししょんぼりと。」

しょんぼりか…どう表現すると良いだろう?
腕を組んで考えていると。

「というのは無理があるので、喜んで身を捧げますという心持ちになさるとどうでしょうか。」
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