第15章 暴れ馬
「音…ですか?」
「はい。…これが使えるのではと…」
月城が懐から出したのは赤く塗られた竹筒で導火線がついている。爆竹か!確かに山のように置いてあったな。恐らくは山道の開拓に利用する物だろう。
「村の近くの作業工場にあった物を一つ拝借して参りました。こういった物の仕組みに詳しい方はいらっしゃいますか?」
月城の問いに皆黙って目線を外した。
が、一人の少年が手を挙げる。
「あの…俺の父ちゃん、花火師で…。俺も少しは知識があるので、もしかしたら…」
「ありがとうございます!貴方の知恵をぜひ貸してください。」
月城は少年隊士に向かって微笑むと、彼も少し緊張が解れた様子だった。
「あとは、囮役ですが…」
月城は何も言わず俺に視線を送ってきた。
目を合わせるが何も言わず、目で訴えてくる。
「…俺か!!」
「ええええええ!?」
その場にいた彼女以外の隊士が驚きのあまり叫んだ。
「ちょっと!あなた!炎柱に何を押し付けているのですか!?」
一人の少年隊士が膝で立ち上がって声を上げた。
「俺は別に構わないが…」
「よくないですよ!柱ですよ柱!来たる鬼舞辻との戦いに残しておかなければならない戦力です!!」
「そうですよ!俺たち下っ端は柱の盾になってでも守るべきところをあなたは何を言っているんですか!」
そんなことを考えているとは少々残念ではあるが、鬼舞辻を倒したいという志は天晴だな。
さすがに月城も圧倒され始めている。
「そうですね…失礼致しました、炎柱様。」
月城は隣にいた俺と少し距離をとってから三つ指をついた。興奮していた隊士も徐々に落ち着きを見せる。
しかしこれでは誰かが囮になると言い出しかねん。この囮役は洞窟の外まで生きて出てこなければならない。それ相応の身体能力が必要だ。だから月城は一番確実で無傷で出られるであろう俺を推薦したのだ。
「では、私が囮役となりますので…」
「何!ちょっと待て!」
月城のとんでもない申し出に、俺はつい彼女の肩を掴んで引き止めた。
「なんでしょうか?」
「囮役は俺が引き受ける!君たちはそれ以外を進めなさい。」
と言うと再び隊士たちが慌て始めた。気持ちは嬉しいが今目の前のことを処理することも必要。