第15章 暴れ馬
「ああそれと!」
隊士が慌てて付け加える。
「鬼は村の外れにある工場に逃げ込みました。仮設の建物で周りに何もないので、今はそこから動けずにいるはずです。」
「わかりました。ありがとうございます。」
月城は静かに部屋を出ていった。
隊士は、なぜ陽のある今に攻めないのかと不思議に思っているだろう。
「安心しろ。あとは俺たちで片付ける。」
「炎柱…申し訳ありません。」
「ゆっくり休め。」
俺は部屋を出て、他の怪我をした隊士の顔を見てから月城を追った。
途中、確かに小さな仮設工場があった。
線路の建設途中のようだ。資材が山積みになっているが作業員はいない。昨日の今日だから中止になったのだろう。
工場の壁には大きな穴が空いていて陽光が差している。しかしそこ以外に入り口はなく、窓もない。そこから入ろうにも銃で狙われるな。鋼鉄の盾でもあれば良いのかもしれないが。
そして地面には馬の蹄鉄の跡がついていた。まるで二頭いるかのような足跡。それを辿ると昨晩、火の放たれた村についた。距離はかなり近い。村人は炭となった家屋の片付けをしていた。かなり広範囲に燃え広がったと見える。さらに蹄鉄を追うと村の広場に続いており、そこに月城がいた。村人と何か話している。
会話が終わる頃合いをみて声をかけた。
「どうだ、何か新しい情報はあったか?」
月城は神妙な面持ちのまま振り向いた。
「鬼の姿を見た人に話を聞くことができました。」
先程の村人だろうか。
「どうやら、かつてこのあたりを治めていた領主の末裔のようです。」
鬼になってもこの地に留まり、各村からの生贄で生き長らえていたらしい。
生贄なんて、昔は神に捧げた地域があることを本で読んだことはあったが、まだそんなことをしている村があることに驚いた。
「生贄を与えることで領主は村を襲うことはなかったようです。それどころか村を狙う山賊がいれば倒し守っていたとか。」
恐らくは守ったというより腹が減って食いにかかっただけだろう。しかし無闇に食うことはせず、生贄をもらうとは、人間だった頃の記憶が微かに残っているのだろうか。考えても仕方ないが。
「馬術、銃の扱いも御手の物だったようなので、鬼でなくとも手強い武人なのでしょうね。」
「そうだな。それで、どうやって鬼を狩る?」