第15章 暴れ馬
目的地からほど近い村に辿り着き、他の隊士が待機する藤の花の家紋の家に向かった。
怪我の程度が軽いものはここで治療を受けて今夜も挑むだろう。
戦いで腕を折った隊士から状況を聞いた。
「昨晩は一般の負傷者が少なくとも三十名、隊士はニ名が亡くなりました。」
一般人の死者は出なかったものの、近くの村に鬼が火を放ったために怪我人が多く出たようだ。その場にいた隊士は隠と協力し、鬼の討伐と救助に班を分けて対処。討伐に当たった一名と、救助の際に瓦礫の下敷きになってしまった一名が死亡した。その場にいた隊士の階級は一番高い者で庚。経験値が不足する中では最も被害の少ない選択であったのかもしれない。
「月城!」
「はい。」
後ろで正座する月城に現在の階級を尋ねると戊と答えた。頑張っているな。彼女は持ち前の能力で怪我が少なく、そのため討伐に当たる回数が多い。順調どころかかなりの早さで階級を上げている。
俺一人でも対処は出来そうだが、継子から離してしまったこともあるので、成長のための手助けはしてやりたい。
「よし!ここは月城に任せる!」
「え?」
拍子抜けた返事が返って来たので後ろを振り向いた。
「調査や他の隊士への指示、討伐を君に任せる。やってみろ。もちろん援護はする。」
「承知しました。では、鬼の情報をもう少し詳しくよろしいですか。」
切り替えも早くて助かる。腕を折った隊士は再び説明を始めた。
「鬼は鎧を着た武士のような出で立ちで、刃の長い刀と南蛮銃で攻撃をしてきます。また足が六本ある大きな馬に乗っている為、機動力があり、こちらも高さのある攻撃が必要となってきます。血鬼術は刀を使った斬撃で単純ですが、刀に当たらずとも衝撃波で切れます。それで昨日、離れた位置にいた隊士が両断され死亡しました。」
「馬の足を止めればいいでしょうか。」
「試しましたが鋼鉄のごとく硬い足であることと、切っても再生します。」
斬撃と銃弾に注意しつつ、接近して頸を切るのがこの場合王道ではあるが聞く限りは一筋縄ではいかなさそうだな。
月城はどうする。俺は黙って様子を見守った。
「分かりました。では現場に言って痕を見てまいります。」
月城は静かに立ち上がった。きっと鬼が戦いの際に残した動きの痕を見るのだろう。