第14章 全て重ねて ※R指定
その手が私の顔に添えられて、横を向かせられるとすぐ目の前に尊いお顔があるので恥ずかしくなり強く目を閉じた。
瞬間、唇に温かい感触。
柔らかで優しく、ただ重ねるだけの口づけに私は溶けてしまいそうになった。
まるで感触を楽しむかのように何度と角度が変わり、私もそれに合わせる動きをした。
ようやくお顔が離れて目を開けると、杏寿郎さんは本当に温かな優しい眼差しで微笑んでらした。
満たされる気持ちと共にこみ上げる愛おしさを、どう表現したら良いのか分からなかった。
彼が私の腰に手を回して抱き寄せようとするので、私もその背にしがみつくように抱き締めた。腰にある大きな手により力が入っているのが分かる。
私は彼に対する愛おしさを留めておけなくなり、再び身体を離して未だ優しく笑む唇に口づけた。少し驚かせたのでしょう、一瞬だけ強張ったのが分かった。
それもすぐに解れていったので、舌をするりと忍び込ませた。
「んっ?!」
戸惑った杏寿郎さんの声が漏れ出した。私も初めてのことなので何が正しいのか間違いなのかも分からなかったけれど、彼の舌に絡ませるようにゆっくり動かした。
「はぁ…ふっ」
時々口の隙間から声が漏れてしまう彼の声が、どこか感覚を刺激して何も考えられなくさせられる。
「待っ…ふぅん、月城、ちょっと!待ってくれ。」
夢中になりすぎたのがいけなかったか、杏寿郎さんは私の身体を無理矢理剥がした。だけど顔が赤くなっているところがなんだか可愛らしい…。
「君は…そんなことを一体どこで覚えたんだ?」
「嫌いですか?」
「いや、好きだ!」
言ってからハッとしてさらに赤くなる杏寿郎さんが面白いのでつい笑ってしまった。
「母からね、聞いたのですよ。」
「君の母上が!?」
父も母も仲は大変によろしかったので、ある日見てしまったのですよね、熱ーーい口づけをしているところを。
子供ながら驚きましたし、何であんなことをしているのかと正直気持ち悪いとも思ったのですが後日聞いたのです。
「ねぇお母様?どうしてお父様のお口に舌なんていれるの?」
お母様もそれはもうびっくり仰天でしたよ。いつの間に見られていたのかと。でも開き直ってこう言っていました。