第1章 異人の隊士
朝よりも強く打てるようになっている。
まだ初日だが今日やったことを上手く吸収できているようだ。
試しに俺も受けるだけでなく向かってみよう。
一度距離をあけてから踏み込んで炎の呼吸、壱の型、出力は半分。間合いに一気に入り込む。月城はすぐ足運びを変えた。俺の木刀が届かないぎりぎりのところまで体を反らせた。良い反射だ!
すると今度は彼女が木刀を構えた。あれは、水の呼吸の型じゃない…!!
体を低くし、足がしっかりと地を踏めるような体勢。俺の見様見真似で不知火を出す気だ。
全集中の呼吸で全身に酸素を巡らせ、強く地を蹴って素早く相手の間合いに入り込み一閃を浴びせる技。
もう彼女は俺の間合いに入った。大したものだ!だがそう簡単に習得できるほど甘くはない!
木刀がより激しくぶつかる音が道場に響く。
俺は彼女の一閃を弾き返した。
「今のは俺の真似か!」
月城の呼吸は既に乱れ始めていた。それもそうだ、慣れない呼吸法は体に負担をかける。
「…はい!…炎柱様の剣技が、お美しいのでつい…。」
「そうか!炎の呼吸を極めたいのなら俺の継子になるか!」
俺は動きをとめず月城に向かって木刀を打ち込む。彼女はそれを上手く流す。
「継子とは!なんでしょうか…?」
さらに打ち込みを続ける。彼女も大きな声をださないと聞こえないほど強い打ち込みだ。
「柱が育てる隊士のことだ!」
「炎柱様の、御業を…教えていだけるのですか?」
月城は受け身を取るので一杯になっていた。
「そうだ!だが鍛錬は今日の稽古のような軽いものではない!これまでも何人か継子をとったがほとんどは辛さ故に逃げ出したからな!」
それを聞いてさすがに言葉を失う月城。
なかなか向かってこないので、俺の打ち込み稽古になっている。
「どうした!君から来なければ稽古にならないだろう!」
「…!はい!」
月城は一度間合いをとった。何をする気なのだろう。新人隊士の動きは視線で読めることがほとんどだが、彼女はいつも俺を見ていない。剣士としては視線をよませないことも技のうちだが。
と、突然回り込むように駆け出してきた。なるほど、動きをよまれんとしているのだな!月城から遠ざかるほどに足運びは変わってしまうのなら、一気に詰める!