第13章 零からはじまる
「温かそうだな!」
今日は少し風が冷たい。あわよくば俺の羽織に入れてやろうと思ったがその必要は無さそうだ。
それはさておき。
「実は、月城に紹介したい人がいる。」
彼女は待ちかねていただろう、後方で潜む甘露寺を手招きした。恥ずかしそうに顔を赤らめてやってきた。
「まあ、綺麗な桜色…。」
月城は本当に桜でも眺めるかのように甘露寺を見ていた。
「以前俺の弟子だった甘露寺だ。名前は聞いたことがあるだろう?」
女性の隊士に教えていたことは月城も知っている。
「甘露寺蜜璃です。」
「月城リアネと申します。よろしくお願い致します。」
お辞儀する甘露寺に対して、手を軽く広げて腰を少し落とす月城。その姿には甘露寺も驚いていた。
「やっぱり、煉獄さんがあんなに幸せそうにお話するのが分かります!月城さん、西洋のお人形さんみたいですもの!」
西洋の人形と言われても俺はいまいち分からなかったが、月城は嬉しそうに笑っていた。
「甘露寺さんも素敵ですよ。その髪色、どのように染めているのですか?」
「えっ!これ!?」
甘露寺は自身の三編みを拾い上げて見ていた。
「私、桜餅が大好きで、いっぱい食べすぎてこの色になったのよ。」
以前はそれも気にしてあまりふれられないようにしていたが、今は笑って話せるようになったようだな。
「そう、桜餅がお好きなのですね。私、出身が関西の方になりますので今度お土産にいたしますね。ぜひ食べ比べてみてください。」
「ほんと!?嬉しいわ!!ありがとう!」
甘露寺は三編みを揺らすほどに喜んでいた。そういえば月城が女性隊士と話すところを初めて見た。異人顔で上背もあるせいかあまり話しかけられることはないと言っていたしな。
「月城さん、リアネちゃんって呼んでもいい?」
「えぇ、どうぞ。」
「よかったら今度我が家にも来てね!パンケーキご馳走するから!」
「まぁぜひ。とっておきの紅茶を持って参りますね。」
これは話がどんどん弾んでいくな。俺はわざとらしく咳払いすると甘露寺がようやく止まった。
「や、やだ私ったら!ごめんなさい二人の時間を…。リアネちゃんきっと来てね!手紙書くわ〜!」