第13章 零からはじまる
「ん?どうした!」
「もしかして煉獄さん、逢瀬ですか?」
うーん、言われてみれば。
「そうだな!!」
「はっっ!!!!」
甘露寺は顔を真っ赤にして目玉が飛び出そうなほど驚いていた。
「あの、失礼ながら…お相手はどんな方なのですか?煉獄さんのお眼鏡に叶う方なので素晴らしい方だとは思いますが。」
どんな、か。稲穂のような黄金の髪と青空のような瞳…。
「澄んだ秋空のような人だ!」
「爽やか!!」
いくらなんでも簡略化しすぎたので、もう少し詳細に伝えると甘露寺は楽しそうに聞いてくれた。食事は初めてではないが、お互いに気持ちを通わせてからは初めてだと伝えると、この逢瀬、絶対に成功させましょうと意気込んでいた。
そもそも逢瀬に成功もなにもあるかは分からないが、最初が肝心だというしな。
「その、月城さん?は西洋人寄りの雰囲気とのことですけど、その日は煉獄さんは和装で行くのですか?洋装ですか?」
「ん?とくに何も考えていなかったが。」
「月城さんがきっと合わせるのでしょうけど、特別な日なのでお召になるものも少し変えてみてはいかがですか?」
よもや!そこまで気が回らなかった!さすがは甘露寺!
「服装か!うむ!新調しよう!」
しかし何をどう新調すればいいだろう?
「はい!早速見に行きましょう!」
「今か!早いほうが良いしな!」
甘露寺は残りの団子を急いで食べきった。
幸いこのあたりは店が多い。決まればよいのだが。
「甘露寺、俺はそのあたりよく分からん!見繕ってはくれないか。」
「わわわ私で良いのですか!?」
「君は都会の出なので俺より詳しいだろう。頼んだ!」
「ひゃい!は、はい!おまかせを!」
甘露寺は俺より真剣な面持ちで店を選び、品物を見始めた。
「これなんかもいい!…あ、あの、ちなみにお予算のほどは?」
「ない!良いものならいくらでも構わん!」
というと甘露寺はとにかく見た目良いものをと、選んでは着せ選んでは着せ、俺は着たり脱いだりするだけだがなかなかに疲れる。
「着物の中に着る立襟はこれなんかどうでしょう?」
「立襟?隊服と同じでは駄目か?」
「…それはちょっと、その…ナンセンスです…」
「…そうか…!」
どれも同じに見えるが素材や形も微妙に違っているらしい。