第13章 零からはじまる
それからというもの、月城は本当に頻繁に手紙をくれるようになった。今はどのあたりにいて、どのような任務なのか、成果はどうだったか、怪我はあるのか、事細かに書いていた。負傷したことが書かれていると不安はあるものの、治療後の経過や完治したことも書いてあるので次第に慣れていった。
俺は都度返事ができるわけではないが、こちらの意に沿ってくれているのでなるべく返すよう心がけた。
しかし、次の休暇が合った際に食事に誘ったことについて時間があれば任務の合間でもつい考えてしまう。今も後輩を連れて茶屋に来ているが、食べる手を止めているところ。
彼女の好物…すき焼きしか知らんな。牛鍋の店はあるにはあるが味付けが違うから好まないかもしれないな。
「どうかしたんですか?煉獄さん。」
隣に座る後輩は、自身の髪と同じ桜色の団子を食べながらこちらを見ていた。彼女は以前弟子だった甘露寺蜜璃。柔軟な身体と並外れた筋力で独自の呼吸を見つけ、俺の手を離れたが優秀な隊士だ。
「いや、ちょっとな!考え事だ!」
「そうですか…」
甘露寺は優しいから心配をかけているかもしれない。
どうだろう、歳も近いし女性の好みならば彼女に相談するのも良いのではないだろうか。それに甘露寺なら隠すことでもないだろう。
「甘露寺!」
「は、はい!」
甘露寺は手に持った団子を慌てて皿に戻していた。
「折り入って相談があるのだが…」
「え!?あ、はい!なんでしょう?」
「君くらいの歳の女性ならば、男から食事に誘われたとして、どんな店なら嬉しい?」
「え!?お食事ですか?…私の意見を、他の女性と同じくしていいのでしょうか…」
「何か問題か?」
「あ、いえ!そうですね…今はカフェも流行ってますけど…煉獄さん…カフェ…」
「カフェか!」
「でも!その相手の男性との関係によっても変わってくると思います。」
「なんと!関係性か!どちらかといえば良いと思うが!仮に恋人ならどうだろう?」
「え!!そうですね…私なら、好きなお相手と一緒ならどこでも嬉しいと思います。」
「そうか!しかしそれでは決まらんな。」
やはり本人に事前に聞いておくか。
いや、その日になって食べたいとも限らないか。
場所もどこがいいだろう。うーむ。
「あのー…」