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桜月夜【鬼滅の刃】

第13章 零からはじまる


これではまた距離があいてしまう。

「月城!!」

俺は月城に向かって手を伸ばしたが、鬼が横から俺の腕を切り落とそうとしたので慌てて引っ込めた。そしてその間にも鬼は増えどんどん積み上がっていき、大きな鬼の姿へと変わっていった。
月城はその巨躯に臆することなく、硝子の日輪刀で肉を削ぎ落としていき、頸を狙う。
あと少し!
だが巨大な鬼の手が月城の身体を掴もうとしている。
危ない、加勢して切らねば!分かっているのに足が動かない。びくともしない足を見ると鬼の手がいくつも地面から生え出し、俺の足を掴んでいた。その手を切り落として彼女の元へ一足飛びする。
月城は既に鬼に掴まれている。
あと少しで奴の手首を切り落とせるというところにきて、月城は握りつぶされてしまった。肉が潰れ、骨の砕ける音がした。
握る手の隙間から大量の血がこぼれ出る。
恐ろしい光景だ。身の毛がよだつ。

俺は刀を強く握り、その巨大な鬼の頸を切りにかかった。
夢中だった。何も聞こえなかった。潰される瞬間、彼女は悲鳴一つあげなかった。本当に一瞬のことだった。結局近くにいても守れないではないか…!




ここで目が覚めた。
最悪の目覚めだ。酷く汗もかいている。夢とはいえ、何もできなかった罪悪感に苛まれる。鍛錬が足りないのだ。眠っている場合ではない。俺は重い身体を起こして道場へ向かった。
夜明けは間もなくだ。日が昇れば沈んだ気持ちも一緒にのぼるだろうなんて考えた。
道場の扉は閉まっていたが、誰かの足音が聞こえた。
まさか月城も鍛錬に起きているのだろうか。顔が見たいな。淡い期待のつもりだったが、戸を開けたらそれは当たりだった。

「おはようございます、杏寿郎さん。煩かったですか?」

「おはよう。いや、俺も鍛錬をしようと思っただけだ。」

月城はどうやら型の練習をしているらしい。
それも独自に考えたものだと言っていた。自分の呼吸に合い、力も十二分に発揮できるのだとか。

「どれ、見ていようか。やってみるといい。」

「…はい。」

月城は心配そうに俺を見てから日輪刀を構えた。
それからゆっくり三つの型を披露した。どれも美しく洗練された無駄のない動き。成長を感じた。

「さん…。杏寿郎さん?」

「ん!?なんだ?」


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