第13章 零からはじまる
鬼に襲われた人を見る度に、これがもし月城だったならと掏り替えて考えるようになった。あと一歩間に合わず亡くなる人を見ると、あまりの苦しさに吐き気がした。
だが柱たるもの、そのような姿を他の隊士に見せるわけにはいかない。いつもの炎柱である己を務め振る舞った。
ありもしないことを想像して恐れをなすのは己の弱さ、未熟さ故。如何なる状況であろうとも、俺が強くあれば万事解決。
刀を振れ!鬼を狩れ!責務を全うするまでは振り返るな。これまでもそうしてきただろう。
日々そうやって鼓舞し続けた。そのせいか、近頃は夢の中でも鬼を狩るようになっていた。頸をいくら切り落としても湧き出てくる大量の鬼に、俺は休まず技を出し続けた。それも朝がこない、暗い場所で。
ある夜のこと、俺は任務を終えてからどうしても帰りたくなって家に戻った。
任務中に打ち付けた背中の痛みが続いているので、本来なら治療が必要なのだが、それを抜きにしてでも帰りたかった。
すると帰りたかった勘が当たったのか、玄関には見覚えのある革靴が置いてあった。月城の物だ。来ていた、無事だったと俺は安堵した。もう夜も晩いので話すのは明日にして休もう。
正直あの夢のせいで眠っても眠っても休まらないのだが、それでも疲れた身体は睡魔を連れてくる。俺は自室の布団で眠りについた。
気がつけば、やはり暗いところで日輪刀を振っていた。
今夜は数が多いな。まるで大道芸人を囲む群衆のように鬼が俺を囲んでいる。多かろうとやることは変わらない。技を何度も出して鬼の頸を切った。不思議と腕や足は疲労しなかった。
しかし今夜の夢はいつもと違かった。なんと、俺以外にも鬼と戦う同士がいるではないか。ずっと遠くで戦っていて姿は見えないが、暗い中で日輪刀が光るので鬼殺隊士と分かる。同士がいるなら心強い!俺はいつもよりやる気に溢れ、周りの鬼を狩り続けた。
次第に数は減っていき、もう一人の隊士との距離が縮まってきた。それが月城であると、ここにきてようやく気がついた。彼女も必死で戦っている。大きな怪我もなさそうだ。
早く彼女の元へ…!もっと近くへ行けば、万が一の場合にも備えられる。
だがどういうことだろうか、あれだけ狩って減らした鬼がまた溢れていた。地面から次々湧き上がってくる。