第12章 花火のように
煉獄家に着いてから、私は一人夕餉の準備をした。一日暑かったのでお素麺に、薬味をたっぷりと入れて。
それを三人、縁側で花火を見ながら食べた。千寿郎さんも杏寿郎さんも同じ顔をして花火を見上げて、お顔に同じように花火が映っていて、私は花火よりもお二人を見ている時間のほうが多かったかもしれない。
二人とも時々こちらの視線に気がついて笑いかけてくれた。
花火の音が激しさを増すと、その美しさに反してどこか寂しくなる。もう少し時間がゆっくり流れたなら良いのに。今があまりにも幸せだから、本当にあっという間に流れていってしまう。それは花火に似ているのかもしれないと思った。時間をかけて作り、花は一瞬咲いてすぐ消えていく。この一瞬のために人々は努力を重ねていく。私も、お二人の笑顔のために努力を重ねよう。強くなって、鬼を殲滅するために尽力し、そして今日のような時間をまた過ごせるように。皆きっと、苦労の先の幸せを目指して頑張っている。例えそれが一瞬でも。
花火は感動に終わりを迎えた。また来年も一緒に見ようと約束できたことがとても嬉しかった。
そして、それぞれが寝床につく準備を始めるとき、千寿郎さんは一冊の本を手に私の元へやってきた。
「姉上、寝る前に本を読んではいただけませんか?」
それは外国語で書かれた本で、以前に差し上げたものだった。ところどころ、辞書見ながら翻訳してもしっくりこないのだという。
「良いですよ。千寿郎さんのお部屋で読んでもよろしいでしょうか?」
「はい!お願いします!」
私は湯浴みと片付けを済ませた後、千寿郎さんのお部屋にお邪魔した。
そこには布団の上で絵本を広げる千寿郎さんと、横でそれを楽しそうに見ている杏寿郎さんがいらっしゃった。
「お待たせいたしました。」
「姉上!お願いします。」
千寿郎さんは本を私にくださると、座る場所を一つ分空けてくださったのでそこに腰を下ろした。お日様が私を囲んでいる。
「さぁ、読みますよ。もっとつめてください。」
私の膝の上で開く本がよく見えるように、お二人はピタリと私について座った。
湯浴みの後ということもあり少し暑いくらいだけれど、まるで姉弟のような気分で嬉しかった。