第12章 花火のように
「次の正月は月城も一緒に過ごそう!」
私は突拍子もない提案に言葉が出なかった。
「そうですね!ぜひ姉上も一緒に年を越しましょうよ。」
二人のお日さまが温かい笑みを向けてくださる。
これがどんなに有り難いことか、伝わるでしょうか。
「良いのですか?正月は、家族団欒というではないですか。」
私は家族ではない、他人だ。分かっているけど言葉にするのは辛い。思い違いでも姉でい続けたい。
「姉上はもう家族みたいなものじゃないですか。」
「うむ!だから集まって当然だ!」
嬉しさに胸が詰まる。お二人は本当に私にとって太陽のような存在だ。ずっと凍りついていたものを溶かしてくれる。
杏寿郎さんだって、柱としての立場もあるでしょうに。私が継子でなくなっても世話を焼いてくださる。
涙ぐみそうになるところだったが、せっかくの祭りの雰囲気を壊してはならないと堪えた。
「ありがとうございます。その際はお邪魔させてください。」
「邪魔するなんて思わなくていい。家と思って帰ってきなさい。」
杏寿郎さんは本当に優しい方。とても素敵な笑顔で言ってくださるのですが、両手に三本もったとうもろこしがどこか可笑しくて、笑いが溢れるそうになってしまう。
「ありがとうございます。冷めてしまうのでどうぞ食べてください。」
大きな双眸はこちらのままむしゃむしゃ食べ始まるので、もうどうにもならなくて小さく笑ってしまった。
すると千寿郎さんも堪えていたようで笑いだした。
「どうした?俺の顔になにかついてるか?」
「いいえ、何も。美味しそうに食べていらっしゃるので微笑ましいのですよ。」
「まだあるぞ!食べるか?」
「いえ、結構です。」
その後も射的の店にて座敷鉄砲を構えて腕を披露したり、林檎飴を食べたり、お面をつけて遊んでみたり、勧められるがままにお酒を飲んだり、広場で大道芸を観たり。
あぁ。子供の頃はまだ家族がいて、皆でこんな時間を過ごした。
隣では素敵な兄弟が幸せそうに笑い合っている。弟たちが今も生きていたらきっとこんなふうに…。
考えても仕方ない。二人は私にも笑いかけてくれる。
「さて、次はどこにいく?」
「姉上はどこか行きたいところはありますか??」
いいえ。私はお二人がいるならどこへでも。
一緒にいていいと言われたならどこへでも。