第1章 異人の隊士
彼女は食べ方が実に綺麗だった。
口の開け方は小さく、スプーンが皿に当たる音はとても小さい。
「どうだ、月城。千寿郎は料理がうまいだろう?」
「はい。とてもお上手ですね。私も教わりたいです。」
月城は口の中のものを残さず飲み込んでから言った。
普段料理をするのかと問えば、家にいるときはしていると言っていた。
「やはり西洋料理が得意なのか?」
「母に習ったものは作れますが、ほとんど和食ですよ。」
「そうなのか。」
調度、千寿郎がカレーライスを山盛りに盛った皿を俺の前に置いてくれた。その量をみて月城はまた驚いていた。
「炎柱様はよくお食べになるのですね…!」
「うむ!食べねば戦はできぬと言うしな!うん!うまい!」
カレーライスが口に入るたびにうまい、うまいと言っていると月城はついに声をあげて笑いだしてしまった。
いやあ、愉快だ!後輩が笑い、弟も喜んでいる。そして昼餉がうまい!
「うまい!うまいっ!!!」
「煩い!!」
父の怒鳴り声だ。ここから父の部屋は遠いのだが、気に触ったのだろう。
俺たちは驚き、静まる。
「あの、今のお声は?」
月城は恐る恐る千寿郎に視線を向けた。
「すみません、父の声です。」
「まぁ、お父上もご在宅だったのですね。それはお休み中なのに申し訳ございません。」
「いや、月城が謝ることはないだろう。俺の声が煩かったのだから。」
わりとよくあることだ。
俺は声が大きいようだからな。
「炎柱様。」
「ん?」
月城は己の口の前に人差し指を立てて、"静かに"の合図をした。
「美味しいのは分かりますが、もう少し小さな声にいたしましょう。」
「うむ。」
まさか後輩に注意を受けるとは思わなんだ。千寿郎も隣でくすくすと笑っている。
この何気ない日常の笑顔を俺は大切にしたい。
やがて三人共皿を空にした。
後片付けは千寿郎と月城が二人で担当した。
二人は仲良くなるのが早いな。皿を洗いながら楽しそうに話していた。
その後はしばし休憩。千寿郎はお茶を入れてくれた。
「月城さん、お茶です。どうぞ。」
「ありがとうございます。」
月城は湯呑を受け取ると、早速一口。