第9章 継子
だがしかし心拍とそういう気持ちが繋がるのものなのか、よく知らない。先程のように緊張する時もあれば、病室で話したようにいつも通りに振る舞うこともある。
「俺にもよく分からん。」
「分からんて…」
宇髄は自分のここに聞いてみろと胸を拳で叩いていた。聞いたところで答えるのは俺なのだから同じだろう。そう言うと苦笑いしていた。
「わざわざ見舞いに来るぐらいだから大事なんだろう?」
「?弟子が怪我をしたら心配して当然だ!」
「ホントかぁ?」
「なんだ、人を薄情みたいに。」
宇髄は顎に手を当てて俺の顔を睨むように見て唸った。
何を探られているんだ。
「煉獄は鈍感だから俺が派手に教えてやる。」
「む?!」
宇髄は俺の鼻先近くまで指をさした。
人を指さしてはいけないだろう!
「お前は間違いなくあの女が気になっている!!」
「だから!弟子だったのだから、気にするのは当然だろう!」
こんなに分からずやだったか宇髄は。
「ちげぇよ!そういう気になるじゃねえよ!女として意識してるって言ってんだよ!てめえ脳味噌まで燃やしてんじゃねえぞ!」
「!?」
最後の悪口はともかく、そうなのか?人に言われても本当にそうなのかが分からない。
「俺は…月城を異性として意識してるのか?」
「そうだ!!つーか俺に聞くな!」
「教えてやると言ったのは君だぞ宇髄!」
「いや、もう疲れたわ。この話終わりでいいか?」
女性を意識したことなんてこれまであっただろうか。鬼殺隊の剣士として精進し、柱になるべくただひたすらにここまで来た。そんな浮ついている暇は無かった。それはこれからも同じこと。
「もし、そうだとして、俺は気持ちを伝えることはしない!彼女も迷惑だろうし、浮ついた考えでは任務に集中し兼ねる!」
そういうものは捨て置くのが一番だ。負担にならない。
「集中できねぇとしたら、それはてめぇの集中力が元からないんだよ。誰か大切にしたい人がいるって俺は悪くないと思うぜ。」
「君は妻が三人もいるから馴れているのだろう。ちょっと多い。」
「恋人や妻子持ちの隊士は他にもいる。守らなきゃいけないやつがいれば、その分自分の在り方も改まる。」
簡単に死ぬわけにいかない為に鍛錬を励む。
第一に守りたいものがあるために急ぎ帰る努力をする。