第9章 継子
こうしてはいられない!
任務を完了させ向かわなくてはならないと気が急く。夜の討伐や各方面の報告をまとめ、お館様への伝達を済ませ、蝶屋敷へ着く頃には既に昼間近だった。
「胡蝶!!胡蝶はいるか!」
屋敷前で呼んでいると、隊服を来た少女が出てきた。顔が怒っている。
「炎柱の煉獄さんですね。しのぶ様は任務で不在です。ご要件は私が伺います。」
少女は胡蝶のところで隊士の療養を手伝っている者だ。年若いがしっかりしていて感心!
「そうか!実は、俺の弟子がここで療養していると聞いてな。見舞いだ!」
「そうですか。では病室へどうぞ。」
少女は病室の前まで案内をし、戸を開けてくれた。彼女がついてきたのはそこまでで、他の仕事をしにすぐいなくなった。
病室は数名の隊士が寝込んでいたが、月城のことはすぐに分かった。
奥のベットで、体を起こして本を読んでいた。結わえた金髪が目立つ。近づきながら名を呼ぶと、直ぐに本を閉じて俺に笑みを見せた。
「思っていたより元気そうだな。」
俺はベット脇の椅子に座る。
「はい。今は機能回復訓練もしています。…あれ確か、お帰りは今日ではなかったですか?」
「うむ!なので見舞いにきた!」
「ありがとうございます。でも私は大丈夫ですから、早く千寿郎さんのところへ帰ってくださいな。待っていますよ。」
「あぁ。君の様子を見たらそうするつもりだ。説明できぬと千寿郎が心配するだろう?」
月城は静かに笑った。今はどこも悪いところは無さそうで本当に良かった。
彼女の笑顔を見ていると、何か温かいものが胸の奥から溶け出すような気がした。
もう少しこの時間を伸ばしたく、俺は月城から任務の話しをあれやこれやと聞き出した。どうやら新しい刀で既に10体の鬼の頸を切ったらしい。階級も上がって庚に。直近に倒した鬼は下弦の陸で、数名の隊士との共闘の末ようやく倒したが、複数箇所の骨折や肺を傷める等してここに運ばれたようだ。
月城の中では初めての激闘であったという。一緒に戦った隊士には亡くなった者もいた。生き残ったのは近くのベットで寝込んでいる彼等らしい。俺に気づいてすぐ起き上がり、会釈してきた。
会話に戻ろうとした時、今はいないはずの者の澄んだ呼声がして振り返る。病室の入り口に胡蝶が立って手招きしていた。