• テキストサイズ

桜月夜【鬼滅の刃】

第9章 継子


なんと面はひょっとこではなく、虎の面らしい。それも黄色と黒の色ではなく赤い縞模様だとか。あの繊細な硝子の刀を作るのだから、相当な腕を持った変わり者だろう。
それからも、千寿郎と月城は定期的に手紙を送ってきた。俺は同じほど返せないが、二人からの手紙には日常の出来事が主に書かれていて、読むのが楽しみだった。
月城は任務の合間に千寿郎に会いに行っているようだ。一緒に食事をしたり、散歩をしたり、鍛錬をしているらしい。ほんの四半刻も滞在できなくても顔を出しにくるという。その度にいろいろな土産物を持ってきて千寿郎を楽しませてくれるようだ。絵本や、文具や、先日は西洋将棋の駒と盤を持ってきたとか。それがとても美しく、見ていても楽しいようだ。
月城からくる手紙には千寿郎が元気でいること、土産に喜んでもらえたこと、鍛錬を見てもらったことなど、とにかく自分のことより千寿郎のことばかり書いてあった。
第三者を通して弟の様子が分かるのは有り難い。ただ文面の最後に必ず、なるべく早く家に戻るように、とあった。耳が痛いな。俺も月城のように時間をうまく作らなくては。自分の鍛錬と巡視と任務で終わっていてはいけないな。
もうすぐ区切りがつくので、そこで一旦家に戻り月城の稽古もつけてやろう。
返事にはそう書いて送った。

だが、あれからなぜか月城の手紙だけぱたりと止んだ。
忙しいのか。それともあの鎹梟が迷子になっているのだろうか。そんな日もあるだろうと、特に気に留めなかったのだが、帰る前日になって手紙がようやく来た。それも彼女の梟が慌てて飛んできて顔にぶつかった。

翼をバタつかせて体勢を整えると俺の頭に乗ってつついてくる始末。早く読めということか。
手紙を開くと、そこにはいつもの几帳面な字で謝罪から始まった。


ー 申し訳ございません。
任務中に負傷しまして、今回の稽古に出られそうにありません。
今は蝶屋敷にて療養しております。

どうぞ千寿郎さんとゆっくりお過ごしくださいませ。 ー


下級隊士の怪我はよくある。それどころか命を落とす者も多い。不謹慎だが珍しくはない。それでも、居ても立っても居られない気持ちにさせられるのは何故だろう。
怪我とはどれほどのものだったのだろう。蝶屋敷で療養となれば骨の数本は折れているやもしれん。
/ 322ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp