第9章 継子
「また千寿郎には任せきりになってしまうからな。それに月城の様子を見ておきたい。」
「分かりました。お願いします。」
千寿郎から半月盆を受け取り、月城の部屋へ向かった。
粥は冷めないように土鍋に入っていて隙間から湯気が上がっていた。
「月城、入るぞ。粥を持ってきた。」
片手で戸を開けて、中へ入ると彼女はうつ伏せになって顔を横に向けたまま眠っていた。
「月城、起きれるか?」
肩を揺すると、重そうに上半身を持ち上げる。
「はい…すみません。起きます。」
熱で赤く火照った頬。乱れた金色の髪。真っ白な首筋を流れる汗。いつもより艶をもった青い瞳。
俺は頭から雷にでも打たれたような感覚を覚える。
「…っ!!!」
なんだ今のは。まともに顔が見れん!
いやしかし!目線を逸らせば着崩れた胸元が…!俺は咄嗟に彼女の着物の襟元を正した。それには流石に驚いて自分でも直していた。
「申し訳ありません…。失礼を…」
「いや!俺が勝手に部屋に入ったのが悪かった!!申し訳ない!!」
なぜだ。月城の声を聞くと耳が熱くなる。おかしくなりそうだ今すぐ耳を塞ぎたい!!早くここを出なければ!
「粥はここに置いていく!しっかり食べてよく休め!」
「はい、ありがとうござい…。」
最後まで聞かぬうちに戸を閉めてしまった。
いくらなんでも良くない態度だ。だが!
なんだ!
これは…一体
どういうことだ!!?
心臓が痛いほどに動悸もする。息がしづらい。
手指も痺れる。体中が熱い。病気か!?俺は何か病にかかったのか…?
どこに戻るわけでもなく廊下を行ったりきたりしている内に千寿郎にも一体何をしているのか尋ねられた。
「なぜだか、落ち着かなくてな。」
「兄上…。大丈夫ですよ。姉上が回復するまで俺がついていますから。」
それはそこまで心配していないが、まあいい。
「姉上はまだ眠っていましたか?」
「ああ。だが粥を持って行ったとき起こしたから、まだ起きていると思う。」
「え!兄上、食事を手伝ってさし上げなかったのですか?姉上は背が痛むのに…」
「うっ…!」
そうだった!食べさせてやろうと思って行ったのに、すっかりそれどころではないと部屋を出てしまった!
「もしかして、兄上もどこか悪くされているのでは…」