第1章 異人の隊士
「少し休もう。」
俺は彼女の呼吸が回復するまで休憩を取らせることにした。
聞けば幼き頃に肺を患ってしまい、呼吸器が弱いらしい。
知らなかったとはいえ無理をさせたことを後悔した。
「次は町の周りを10周しようと思ったが、半分に減らそう。」
大きく吸って、吐き切る。この流れを体に叩き込むために過度な動きを排除することにした。
肺を鍛えるには使うしかない。それは彼女もよく理解していた。
「これでも育手の方に出会う前と比べたら、とても良くなったのですが。まだまだですね。」
町の外までゆっくりと歩きながら月城は言った。
「呼吸は正しく使えばもっと強くなる。ただし、肺は一度病で傷ついたら回復は難しい。限界まで底上げをして、その具合によっては戦法を変えるほうがいいかもしれない。」
「戦法…ですか?」
「あぁ。特に君の場合は、相手の動きを読んで先手を打つ動きを得意としている。少ない動きと瞬間的に集中することで力を発揮させることもできるだろう。ただし、博打のような戦い方でもある。」
「頑張ります。呼吸を。」
「うむ!」
月城と歩いていると、少ない呼吸で長時間動けるようにしているのが分かった。常人の用に機能しない肺を使うのだとしたら、自然とその癖がついたのだろう。だからこそ大きく肺を膨らませ空にするまで吐ききるというのは不得手なのだ。
それでも呼吸法を会得したのは努力の賜物だ。なかなかに根性はある。
それでいて繊細な面もあった。道行く人の目線を感じては、申し訳無さそうにしている。
異人は珍しいからな。俺も人の事は言えたものではないが。皆我々を避けるようにしていた。
「あの…」
「ん?なんだ?」
「炎柱様の髪は、生まれつきですか?」
俺の髪色はよく派手だと言われる。金髪でところどころは赤毛だ。おかけで異人と間違われることはよくあった。
「あぁ!煉獄家の男子は代々こうだ!」
「そうなのですか。」
月城は視線を落としたままだった。
その珍しい目の色も、見慣れぬ故に心無い言葉をかけるものもいるだろう。俺も言われなかったことがないわけではない。
「些末な問題だ、気にするな!異人はみな肌が白く、目は様々な色をしているだろう?」
元気づけるつもりだったが彼女の表情は変わらなかった。これはきっとなにか根深いものだろう。