第8章 賑やかな祭りではご用心を
結莉乃
「だって、可愛いですよ…っふふ…」
胤晴
「こんな所、誰かに見られ─」
眞秀
「失礼します!大将!この間……え」
結莉乃
「あ」
以前のような冷たさはなくなり、話しやすい鬼王に戻った事により一つ断りを入れて確認もせずに入室してしまう…という事もあり、その様子を眞秀に見られてしまう
眞秀
「たーいしょー!?!?!?なんすかそれ!!!」
驚きに大きい声を上げる眞秀を見て、胤晴は額を手で覆い結莉乃は顔を引き攣らせていた
それから、騒ぎを聞き付け腕を組む凪の前で結莉乃が正座をしていた
凪
「王で遊ぶんじゃありません。良いですね」
結莉乃
「はい…すみません」
胤晴
「その辺にしてやれ。彼女が笑っていたから、もう良い」
凪
「はぁ…彼女に甘過ぎですよ」
少し呆れたような凪の言葉に胤晴は視線を逸らす。だが、内心では凪も彼女に感謝していた。元の胤晴が戻ってきた事に
そうしてやってきた祭り当日、結莉乃は選んでもらった浴衣に身を包み髪には普段通り眞秀から貰った簪。慎太から貰った耳飾りが耳で揺れていた
全員で祭りの会場に着くとその場に居た人達が振り返る
町人
「鬼王様だ…!」
町人
「今年は参加して下さるのね、嬉しいわ」
町人
「お屋敷の面々が揃うと絵になるねぇ」
その声を聞いて彼等がこの領でどれだけ親しまれているのかが分かった。その中に居られる事が少し嬉しくもなった。
橙色の提灯が屋台を照らし色とりどりの浴衣を纏った鬼達が行き交う賑やかな光景に結莉乃の胸は高鳴った。聞こえてくる太鼓や祭囃子の音が更に気分を上げてくれる
天音
「オラ、ぼーっとすんな。迷うぞ」
結莉乃
「あ、うん!」
祭りの空気が嬉しくて浸っていると隣から天音の掠れた低い声が届いた
天音
「祭り…初めてなンか」
結莉乃
「んーん。でも、最近では行ってなかったから楽しみ」
天音
「そうか」
八一
「楽しみだからって一人で歩いたりしないでよ?探すの面倒だし」
結莉乃
「わ、分かってる」
慎太
「そんな言い方無いだろう。大丈夫だ、俺が見付けてやる」
周りから声を掛けられて結莉乃はまた楽しくなる。こんな中に自分が居られる何て、と