第8章 賑やかな祭りではご用心を
夕餉を終えると結莉乃は言われた通りに胤晴の部屋へと訪れたが、すぐに固まってしまう
胤晴
「どうした。早く入れ」
結莉乃
「あ、はい…失礼します」
慌てて入るものの結莉乃の視線は沢山の浴衣にこていされたままだった
胤晴
「この中から君の浴衣を選ぼうと思って用意させたんだ」
結莉乃
「え…私のですか?」
胤晴
「嗚呼。此処へ来て初めての祭りだ…好きな浴衣を着て楽しんでもらいたい」
結莉乃
「そんな…ありがとうございます!」
胤晴の心遣いが結莉乃は嬉しかった。
でも、このイベントに胤晴は参加していなかった…理由はやはり風月さんが関係しているのだろうか?と純粋な疑問が浮かんできた。その疑問が顔に出ていたのか胤晴は、ふっと笑みを零す
胤晴
「風月が亡くなってからはそんな気分になれなくてな。参加するのは久方ぶりだ」
結莉乃
「そうなんですね。…ふふ、楽しみですね」
胤晴
「嗚呼、そうだな」
結莉乃の笑みにつられるようにして先程よりも胤晴は柔らかく笑んでいた。それから結莉乃は浴衣へと視線を落とす
結莉乃
「どれも綺麗で悩んじゃいますね」
色とりどりの浴衣を見ていると横から、すっと浴衣が寄せられる
胤晴
「これ…似合いそうだ」
白に少し桃色が混ざった生地に梅の花が咲いた浴衣と赤い帯だった
結莉乃
「綺麗…これにします!」
一瞬で気に入った結莉乃は迷わずに胤晴が選んでくれた浴衣にした。この浴衣をきて祭りに行ける、それが結莉乃を更に楽しみにさせた
結莉乃
「ところで胤晴さんはどんな浴衣を着るんですか?」
胤晴
「ん?俺は適当に」
結莉乃
「久し振りなんですよね?ちゃんと選びましょうよ!」
実は久し振りの祭り参加に嬉しくなった凪が慌てて胤晴の浴衣も幾つか持って来ていたのだった。それを結莉乃に話せば、選びたいと言う話になり今度は胤晴の浴衣が並んだ