第7章 馴染みゆく彼女の存在は大きくて
そう考えている間に胤晴は黒い馬を外へと出し、結莉乃へ手を差し出す。結莉乃がその手を掴むと優しく胤晴は彼女を持ち上げて馬に乗せてくれ、結莉乃の後ろに胤晴が乗る
高くなった視界に結莉乃が感動していたが、後ろに胤晴が乗り手綱を握っている事により、まるで後ろから抱き締められている様な感覚になる。背中が触れたらいけないと結莉乃の背筋は、ぴんっと真っ直ぐになる
胤晴
「俺に凭れても大丈夫だ」
結莉乃
「すみません」
少し力を抜くと胤晴の胸元に結莉乃背中が触れる。初めて感じる体温に結莉乃も…恐らく胤晴も少し緊張する。
ゆったりと歩き出す馬が町に降りると、町人の視線が集まる。鬼王である胤晴の前に結莉乃が座っているのだから仕方の無い事。
結莉乃
「馬って初めて乗りましたけど…凄いですね」
胤晴
「そうか。気に入ったか?」
結莉乃
「はい!…私も乗れる様になりますか?」
胤晴
「嗚呼。君なら出来る。…俺が教えよう」
結莉乃
「良いんですか?」
胤晴
「嗚呼」
結莉乃
「ありがとうございます!」
楽しみになりながらも結莉乃は景色へと視線を向けた。徐々に人通りは少なくなり…森の中へ入って行く
結莉乃
(この世界の森って綺麗な所が沢山なんだ…)
眞秀に連れてきてもらった花畑、八一に教えてもらった秘密の場所…ある所は別の場所なのに、必ず連れて行かれるのは森なため結莉乃はこの世界の森にはまだまだ綺麗で素敵な場所が溢れているんじゃないかと思った
そんな事を考えていると開けた場所に出る
結莉乃
「わぁ…綺麗…」
結莉乃の目の前には大きな湖が陽の光を浴びてきらきらと揺れていた。その大きさと綺麗さに結莉乃は目を奪われた。