第7章 馴染みゆく彼女の存在は大きくて
結莉乃
「だから、私は…命を奪う貴方達から他人も自分も守る為に刀を振る」
異形
「苦シイ…」
結莉乃
「貴方達が今度は妖怪になれる様に…生きられる様に、次に繋がるよう祈りながら刀を振る」
異形
「結局、ボク…の…命ハ、奪う…ンダ…」
結莉乃
「それは…ごめんなさい。でも─」
異形
「いイん、だ…次ハ、生キれル…かも、シれ…なイ…君の、おかゲで…」
祈る事しか出来ないのに、それを信じて命を渡そうとしてくれている姿に胸が苦しくなった
異形
「ボク、を…切っテ…」
結莉乃
「…うん。貴方が次は生きられる様に…」
結莉乃は鼻の前で両手を握り強く…強く祈った。そして、刀を握り直すと息を細く吐き出し、脚を踏み込むと異形へ刃を突き刺した
異形
「アリガトウ…」
初めて見た歪ではない異形の笑顔は、とても柔らかくて…悲しかった。異形を倒した事により真っ黒な空間にはヒビが入り消え去った。
突然訪れた目を貫く様な光に結莉乃は目を瞑り、腕で覆った
眞秀、慎太
「結莉乃…!」
結莉乃
「二人共…」
眩しさに目を細めながらも目を開けると心配そうな二人が駆け寄って来た。結莉乃が倒したのと同時に二人を阻んでいた黒い靄も異形も居なくなっており、かわりに結莉乃が居たのだ
慎太
「何で泣いて…」
結莉乃
「え…?」
慎太に問われ結莉乃が頬に触れると濡れていた。涙は次から次へと溢れた。そして、涙が収まると心配そうに見詰める二人に向き直る
眞秀
「そうか…そんな事が」
結莉乃
「うん。…皆そうなんじゃないかなって、怖いだけじゃないのかもって思った。…だから私、次は生きられる様に祈りながら戦おうと思う」
結莉乃から異形とのやり取りを聞いた二人は、結莉乃の言葉に優しい笑みを浮かべた。
慎太
「ん、俺も…そうする」
眞秀
「嗚呼、俺も」
その事が嬉しくて結莉乃は笑みを浮かべて感謝を述べた。
そして、結莉乃が体験した事は胤晴達にも伝えられ…全員が彼女の思いに賛同した