第7章 馴染みゆく彼女の存在は大きくて
お婆さん
「おお…これは凄い。もう痛くないよ、ありがとう」
結莉乃
「良かった…」
折れていた脚は元に戻った様で彼女は驚いた様に感動して何度も脚を動かしていた。店主も結莉乃へ何度も感謝を述べた
店主
「これ持って行っておくれ」
結莉乃
「良いんですか?」
店主
「嗚呼。治してくれたんだから当然さ」
結莉乃
「ありがとうございますっ」
結莉乃が乾物を貰って店から出ると、乾物屋の前には眞秀と慎太が立っていた
慎太
「お疲れ」
結莉乃
「ありがとう」
眞秀
「お、乾物貰えたのか」
結莉乃
「うん」
眞秀の問いに結莉乃は持っていた藁籠を開いて中を見せた。
結莉乃はいつも声を掛けられるままに人々の願いに応えて傷や病気を治してきた。だが、それは壬生でだけ認知された力。いずれ、他の領にも知られる…そう胤晴が思っていた矢先にそのいずれはやってきた
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それは結莉乃達が町に行っている時の事だった。
薄暗い場所に赤い番傘をさした艶のある女と胤晴の姿がある
「あんさんの所で希少な存在を保護してるとか。…ちとずるいんとちゃいます?治癒できる存在を独り占め、なんて」
赤い紅がひかれた唇が弧を描く。ふわりと彼女の背中で揺れる九尾は意志を持っているよう。胤晴は彼女からの言葉に腕を組みながら鼻で笑う
胤晴
「君達は治りが早いからいらないだろ」
「その言葉、あんさんにそのままお返しします。私達よりも鬼は何倍も治癒力が早いやないですか。必要ないでしょ?」
胤晴
「うちは彼女を客として受け入れてるんだ」
「へぇ…?」
艶のある声には、どこか揶揄うような意味合いがこもっていた
胤晴
(彼女への接触がいつになるかは時間の問題か…)
接触があるのは問題ないが危害を加えないとも限らない為に胤晴は、その辺を心配していた
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そんな事を知らない三人は必要な物を購入する為に店を渡り歩いた