第7章 馴染みゆく彼女の存在は大きくて
天音
「うし、休憩は終いだ。もう少しやるぞ」
結莉乃
「あ、うん!分かった」
立ち上がった天音の声に結莉乃も慌てて立ち上がり頷き、木刀を握り直す。そして、二人は稽古を続けた。
それから結莉乃は眞秀と慎太と共に町へ食糧調達へと降りてきていた
結莉乃
「こっちの葱にしよ」
眞秀
「結莉乃、林檎食うか?」
結莉乃
「食べる!」
結莉乃の声に眞秀が幾つか林檎を見繕う。そうしていると奥から店主の娘が出て来て、結莉乃を見て僅か安堵の表情を覗かせる
娘
「あぁ…結莉乃ちゃん、丁度良かった!」
結莉乃
「どうかしたんですか?」
娘
「お向かいの乾物屋さんのお婆ちゃんが脚の骨を折っちゃったんだって。結莉乃ちゃん後で見てあげてくれないかい?」
結莉乃
「分かりました。この後に行きます」
眞秀
「それなら此処は俺達が買っておくから先に行ったらどうだ?」
結莉乃
「本当?」
慎太
「嗚呼。行ってこい」
二人の言葉に結莉乃はお礼を述べてから向かいの乾物屋に駆け込んだ。すると、その音に気が付いた店主が出てきて丁度良かった…というような安堵と縋る様な表情を見せる
店主
「良かった、結莉乃ちゃん!乾物を買いに来たのかい?けど、その前に頼みたい事が…」
結莉乃
「お婆ちゃんが骨折したって聞きました」
店主
「そうかい。良かった…さ、上がって」
結莉乃が店奥の住居スペースに入ると座椅子に座ったまま脚を伸ばしている馴染みの町人を見付ける
店主
「婆ちゃん、結莉乃ちゃんが来てくれたんだ」
お婆さん
「そうかい、すまないねぇ」
結莉乃
「良いんですよ。これくらいしかお役に立てませんから」
柔らかい笑みを浮かべると結莉乃は膝をつき、折れた脚へと瞼を閉じて手を翳す。すると、淡い光が彼女の脚を包み込み…やがて光が消える
結莉乃
「どうですか?」
目に見えない病気や怪我を治す時、結莉乃は緊張する。本当は治っていなかったら、と。だから、不安げに見上げる