第6章 慣れは非日常を日常へ変えていく
八一
「階段が外れたりは無いから、ゆっくり上んな」
結莉乃
「分かった」
少しだけ緊張しながらも結莉乃はゆっくりと木の階段を踏み締めて上って行き、小屋の前へと立った。後から来た八一が扉を開けてくれる。その中は微かな生活感のようなものがあった
結莉乃
「凄い…本当に秘密の場所って感じがして、ちょっとわくわくするね」
八一
「だろ?君なら自由に使ってくれて良いよ。でも、誰かに教えたりしたら許さないからな」
結莉乃
「勿論、言わないよ!」
二人で小さな椅子に腰掛けると窓の外に見える景色に結莉乃は目を奪われた。自分がいた世界とはまるっきり違う。緑は多く小さく見える町では人とは異なる角を持った者達が行き交っている様子が見えて視界が広く感じた。
八一
「結莉乃ちゃんはさ、どんな風に育った?」
結莉乃
「え?」
不意に隣から問われたそれに結莉乃は首を傾げる。だが、少し考えて口を開く
結莉乃
「普通…だと思う」
八一
「普通、か。…普通ってさ人それぞれの経験によって違うと思わない?例えば俺は凄い貧しい家で育った。着る物には穴が空いてるのが普通だし、食い物が食べられない日があるのも普通だった」
結莉乃
「……っ」
自分が経験してきたそれが全てで普通だと答えてしまったのを後悔した。だが言われてみればそうだと、自分が経験した事を出来てない人もいる…と反省した。
それと同時に攻略していなかった事もあり彼の過去を知らなかった結莉乃は驚いた
八一
「幼い頃に大人を褒める事を覚えたんだ。褒めて気分を良くすればした分だけ得をした。食い物も服も…与えられた。大人を褒めて毎日を過ごす、それが俺の普通。な?結莉乃ちゃんの普通とは違っただろ?」
結莉乃
「ごめんなさい、私…何も考えずに…っ」
八一
「責めてるとかじゃないから、そんな顔すんな」
眉を下げて八一は笑うと結莉乃の頭を優しく撫でた