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「鬼の花嫁」世界に迷い込む

第6章 慣れは非日常を日常へ変えていく




八一
「生きるため家族のためとはいえ、そんな毎日を過ごしててさ思ったんだ…大人って嫌だなって。でも、単純で馬鹿だなってさ。けど…その癖が抜けない自分が一番の馬鹿だって思うんだ」


何で八一が自分にこの話をしてくれたのか結莉乃には分からない。でも、こういう話はあまりしたくない筈…八一が自分に対して何を求めているのか、それは分からなかったが結莉乃は膝に置かれた八一の右手を両手で包んだ


結莉乃
「馬鹿じゃないよ。だって、生きる為に必要な事だったんでしょ?それでご家族は助かっただろうし…。それに、その癖が役に立った事だってあったんじゃないかって私は思う」

八一
「…そんな風に言われたの初めてだ。…君の言う通り役に立った事あるよ。敵の情報収集とかさ…はは、確かに悪い事だけじゃないな」


少し泣きそうな顔をしながら八一は笑った。右手を包む暖かくて小さい温もりに左手を重ねる


八一
「君の手は小さいのに優しくて暖かいね。今まで俺が触れてきた誰よりも小さいのに…大きくて暖かい手だ」


そんな事を初めて言われた結莉乃はどうして良いか分からず固まる。だが、八一の表情は彼女が見てきた中で一番穏やかな表情を浮かべていた


結莉乃
(簡単じゃないけど…他の人の過去も知りたいな。ゲームだから仕方ないけど、推しだけなんて少し偏ってた。ここには選択肢なんか無いから過去を知って彼等が嫌がる事を少しでも無くしたい)


その表情を見たまま結莉乃はそう思った。
選択肢があっても、どちらを選んでも危なそう…そう思う事は何度もあった。だが、選択肢が無いのは更に大変だと感じた。

同時に選択肢があっても過去に踏み込んだり、地雷を踏んだりして攻略対象とすれ違ったりもあった。その為、選択肢を押すのにもその先の事を見る勇気が必要だった事もあった。


結莉乃
(でも、それがあったからこそって言うのも…あったよね)


その苦労があったから幸せなエンドが嬉しかったりもした。

生活を潤す為のゲーム…実際に中に来て経験する事なんてまず有り得ない。でも、不思議な力によってそれを実際に体験しているからこそ…彼等が生きているというのを実感しゲームの中だと言う事を結莉乃は忘れそうになる



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