第6章 慣れは非日常を日常へ変えていく
八一
「俺思ったんだけど」
結莉乃
「ん?」
八一
「結莉乃ちゃんの治癒って自分には使えないの?」
結莉乃
「自分に…やった事ないから分からない。何か勝手に自分以外にしか使えないって思ってて、試した事も無い」
というのも大きな怪我をしなかった事も試そうと試みなかった原因だろう
八一
「呆れた。それくらい試しておかないと何があるか分からないだろ。大きな怪我をしてから自分には効かなかったとか笑えない」
結莉乃
「た、確かに…」
それによって自分が怪我をしても少し無理して良いのかどうかが分かる、なんて結莉乃は考える。そして、着物に隠れている腕を晒すと包帯が現れ…そこに手を翳す。
淡い光が現れ包帯ごと包み込む…光が消えてから包帯を取ってみると
結莉乃
「あ…治ってる…」
異形から受けた切り傷は消え、白い腕だけがそこにはあり結莉乃は何度もそこを摩った
八一
「ほら、やってみて良かったろ」
結莉乃
「うん…八一くんに言われなきゃ試して無かった。ありがとう、教えてくれて!」
八一
「どういたしまして」
全て素直に受け取り試し、感謝を述べる結莉乃が少し心配になった。いつか騙されないか?と彼女の素直さに漬け込んで何かされないかと考えている八一の前で結莉乃が少し不機嫌を滲ませた
結莉乃
「こいつ馬鹿だから騙されるんじゃないか、って思ってたでしょ」
馬鹿、までは流石に思わなかったが意外に鋭いんだなと八一は少し感心する。だが、返事をもらえない結莉乃は気に入らなかったらしく
結莉乃
「やっぱり、馬鹿だからって思ってたんだ。私だって信じれるか信じれないかくらい見分けられるよ!……多分」
八一
「多分かよ」
少し自信がなかったのか結莉乃は小さな声で付け足した。突っ込まれたそれが少し恥ずかしかったのか結莉乃の頬は淡く染った