第6章 慣れは非日常を日常へ変えていく
顔が赤いのを指摘された天音は頭をガシガシと乱雑に掻く。
八一
「天音ってば結莉乃ちゃん独り占めしちゃってさ」
天音
「してねェよ、稽古だ稽古」
八一
「ふーん?ま、何でも良いわ。…結莉乃ちゃん、俺と散歩しない?」
壁と八一に挟まれてから初めて会う結莉乃は八一の誘いに一瞬だけ戸惑いの色を瞳に宿らせる。だが、あの日語られたのは本心に思えて…自身は排除対象にはならなかったのだから大丈夫なのではなんて思う
天音
「おい、てめェこいつに何かしたンか」
八一
「はぁ?何もしてないよ」
天音
「嘘吐いてんじゃねェよ、裏表野郎。今こいつが一瞬戸惑っただろ」
結莉乃
(バレてた…!)
八一
「我が主につく害虫は早めに排除しておくのが一番だろ?ま、結莉乃ちゃんは排除しないけど」
眉間に皺を刻む天音と顔は笑っているのに目が笑っていない八一を見て結莉乃はどうしたら良いか分からず固まったが、慌てて二人の間に入る
結莉乃
「お、落ち着いて二人共」
彼女の声で二人は同時に顔を逸らした。結莉乃は苦笑しながら簡単に場を収めてしまうであろう、眞秀の助けを求めていた。だが、そんなタイミング良く助けが入る訳もなく
八一
「で?俺と散歩、する?しない?」
結莉乃
「あ、えと…します」
皆の事をちゃんと知ろうと考えている結莉乃は八一の再問い掛けに頷いた
八一
「よし、じゃ決まり。玄関で待ってるから、準備出来たら来な」
そう言って八一は結莉乃の頭を軽くぽんぽんっと叩いてから去って行った
結莉乃
「天音くん、今日もありがとう。また明日もお願いします!」
天音
「おう。じゃな」
どこか複雑そうな表情を浮かべながらも天音は結莉乃に背中を向けて去った。それを見送った結莉乃は自室へ戻り簡単に湯浴みをさせてもらい、若葉に着物を着せてもらった