第6章 慣れは非日常を日常へ変えていく
結莉乃
「そうかな。…私はそんな事ないと思うけど」
天音
「ンでだよ」
結莉乃
「だって綺麗な響きで優しいし…でも、何か強さと格好良さもあって天音くんにぴったりの名前だと思って。あ、でも強さ感じるのって天音くんの影響なのかな?…んー、分かんないけど私は良い名前だと思う」
自分が長年、嫌ってきた名前。それをここまで肯定された事がなくて…おまけに自身が背負っているからこそ、この名前に強さも感じるなんて言われれば天音の頬は微かに染まる
天音
「………だが、その…アンタに呼ばれるのは…嫌いじゃねェ」
結莉乃
「え…?」
告げられた言葉に結莉乃がきょとんとすると天音は、ばっと自身の顔を腕で隠し
天音
「み、見ンなよ!」
結莉乃は彼にこんな可愛い一面があったなんて知らなくて、バレないように小さく笑った。そして、もし本当に自分に呼ばれるのが嫌いじゃないのなら…
結莉乃
「…じゃあ、私が沢山呼んだら天音くんは自分の名前好きになる?」
天音
「ハッ…どーだろうな」
好きになってくれたら嬉しいと思い問い掛けた結莉乃だったが、素っ気ない言葉を吐き出しつつ顔を反らした天音を見ると耳が赤く染っていた。
言葉は雑だったり、好戦的だが可愛い一面を知れて結莉乃は嬉しかった。それと同時にいつも強い天音の少し弱い部分を見られた気がして悪戯心が擽られた
結莉乃
「天音くん」
天音
「……」
結莉乃
「あーまねくん?」
天音
「……っ」
結莉乃
「何で無視するの天音くん」
天音
「だァー!もう、っるせェなァ!」
顔を真っ赤にして振り向いた天音を見て結莉乃は肩を揺らして笑い出す。それが更に天音に照れを覚えさせて彼の頬には熱が集まる。
八一
「あー、いたいた。ってあれ?天音、何か顔赤い?」
のんびりとした声が聞こえて結莉乃が振り向くと、八一が二人の方へ向かって歩いてきていた