第6章 慣れは非日常を日常へ変えていく
火が消えた事により店主たちが戻ってきて、自身の店の酷さに表情が悲しげに歪む。その中で結莉乃は先程の町人を見付け近付く
結莉乃
「おじさん…」
町人
「結莉乃ちゃん!何だい、その傷と煤は?」
結莉乃
「少し、ね」
突っ込まれたそれに苦笑してから店へと目を向ける
結莉乃
「おじさんのお店…」
町人
「酷い有様だな。だが、命あっただけで良かったよ。命まで無くなったらやり直す事も出来ないから」
辛いはずなのに前向きな言葉を零す町人に結莉乃は、強いな…と涙ぐみそうになるのを我慢する。他の町人も暗くなる所か皆で力を合わせて頑張ろう、と互いに励まし合っていた。
慎太を治してから自分のものにした治癒能力は、すっかり壬生では定着した。火傷や慌てて転んでしまった人の傷を結莉乃は順に治していく。
二人は屋敷へ戻ると胤晴の元へと向かい…暫くするとその場には全員が集まった。初めて見る光景に結莉乃は内心驚いた
凪
「話の前に…何です、その格好」
結莉乃が問われたそれに答えようか悩んでいると代わりに眞秀が説明をした。無茶したそれに対してそれぞれの反応を見せたが、結莉乃は怒られなかった事に安堵した
胤晴
「それで話とは」
結莉乃
「はい。防御できる力が現れたんです」
胤晴
「防御?」
結莉乃
「はい。先程、眞秀くんの説明にあったお店の中で木が落ちてきた時に当たらないでって思ったら目の前に水色の光が現れていました」
胤晴
「成程…」
凪
「また不思議ですね」
天音
「不思議でも何でも守る術が増えたンなら、それで良いンじゃねェすか?」
黙っていた天音の言葉に胤晴は腕を組んで少し考えてから頷いた
胤晴
「確かにその通りだな。刀だけでは守れない自分や他人の身を守れるようになったという訳だ」
結莉乃
「はい!瞬時に使えるように精度を上げます…!」
結莉乃の言葉に胤晴は、頑張れと告げた。その言葉に自分のペースで頑張ろうと結莉乃は意気込むのだった