第6章 慣れは非日常を日常へ変えていく
眞秀
「ったく…!」
眞秀は再び異形に向き合い結莉乃に対しての腹立たしさを零した。それは心配からくる腹立たしさであった
結莉乃
「此処からなら入れる…!」
恐ろしい程の熱気に腕で顔を軽く覆いつつも、入れる場所を見付けて結莉乃は一つ息を吐き出して火の海へ飛び込む
結莉乃
「どこにいますか!」
「たす…け、て…っ」
火の音に紛れて聞こえてくる弱い声に耳を澄ませて結莉乃は、危険の中にも安全を探して進んでいく。
結莉乃
「いた…!大丈夫!?」
口と鼻を両手で覆いながら座り込んでいる男の子を結莉乃は見付けて慌てて近付く。男の子の煤で汚れた顔は結莉乃の登場によって少し安堵が覗く
結莉乃
「立てる?」
男の子
「うん…っ」
結莉乃は男の子を支えながら立たせて自分が来た道を引き返そうと振り返る。その道へ向かっている途中、二人の上からべきべきと大きな音がたった。頭上へ視線を向けると大きな木の柱が燃やされて二つになっており、二人へ落ちてきそうだった
結莉乃
「急いで!」
そう男の子を支えながら歩くものの、その木はバキッと再び大きな音をたてて二人の上へと落ちてきた。結莉乃は咄嗟に男の子を抱き締めた
結莉乃
(どうか…どうか当たらないで…!)
そんな有り得ない願いを結莉乃は男の子を強く抱き締めながら胸中で呟いていた
すると─…
結莉乃
「え…?」
一向に訪れない痛みに結莉乃が恐る恐る目を開けると、淡い水色の光が二人を覆い落ちてきた木を防いでいた。男の子も自分の目の前で起こっている事が理解できなくて、きょとんとしていた
結莉乃
(もしかして…)
この感覚を体験した事がある結莉乃は一つの答えに辿り着き、再び男の子を支えて火の中を走り始める