第6章 慣れは非日常を日常へ変えていく
結莉乃と眞秀が連なる店に視線を向けると火が生を得たかのようにうねり、店を燃やしていく様子に二人の表情は険しくなる
異形
「ヴヴ…」
火の中から異形が五体、姿を現す。結莉乃と眞秀は柄へと手を伸ばし素早く抜刀する。隣にいた結莉乃に眞秀が、ちらりと視線を向ける。
結莉乃の表情は以前と異なり逞しく、迷いが無いようだった。眞秀はそれを見て僅かに安堵し頑張ってきた彼女を信じる事にした
眞秀
「行くぞ…!」
結莉乃
「うん!」
眞秀は鮮やかな動きで二体の異形の背後へと滑り込み、二体同時に刀を振る。それを受けた異形は悲鳴を上げて事切れる。
結莉乃
「……っ!」
結莉乃は大きな異形を前に天音に教えてもらった通りに動こうと走り出して、思い切って滑り異形の脚を切り付け痛がっている間に身体を貫き退治する
結莉乃
「よし…!」
しっかりと自分の力に変えられていると実感して結莉乃は安堵したが、すぐに自身に向かって突進してくる異形を見て刀を握り直す。
結莉乃に向かって振り上げられた腕を何とか避けると迷わずその腕を切り付ける
異形
「ギャア…!」
「たす、けて…っ」
結莉乃
「……!?」
結莉乃の耳に届いた微かな助けを求める声に、そちらへ意識を向けた一瞬の隙に異形に腕を切り付けられ返してしまう。隙を見せないと決めていたのに、見せてしまった隙に眉間に皺を寄せつつも力を込めて異形の身体を貫く
異形
「ヒギャア!」
結莉乃
「眞秀くん!」
眞秀
「何だっ」
結莉乃
「此処、任せても良い!?」
突然の言葉に眞秀は異形の腕を刀で受け止めながら理由を求めるように結莉乃へ視線を向ける
結莉乃
「お店の中から声が聞こえたの!」
眞秀
「まさか…あの中に飛び込もうってのか!?」
結莉乃
「うん。まだ完璧には火も回ってないし…!」
眞秀
「おい、結莉乃!」
眞秀に返事をしてから結莉乃は慌てて飛び出してしまう。無茶な行動に出る結莉乃に眞秀は声を荒らげたが、その声は届かなかった