第6章 慣れは非日常を日常へ変えていく
眞秀
「結莉乃が来てから大将は前みたいに広間に来るようになったし、部屋にこもる事も無くなった。雰囲気だって戻って俺等も前みたいに大将に声を掛けられる様になった」
結莉乃
「でも、それ…私のおかげってわけじゃないと…」
眞秀
「いや、結莉乃のおかげだ」
そんな胤晴が変わる様な事をした覚えが無い結莉乃は戸惑った。だがあの日、胤晴に笑い方を教えるように突っかかってから胤晴は確実に変わったのだ。
納得は出来なかったものの否定し続けるのも良くない気がした結莉乃は、それを受け取る事にした
結莉乃
「ご馳走様でした、美味しかったです」
看板娘
「またいらしてください」
そう声を掛けてから二人は甘味処を後にした。支払いをしてもらった結莉乃は申し訳なさそうにしながら眞秀へお礼を述べた。眞秀はお土産のおはぎを持っていない方の手を振って暖かく笑った
二人が帰ろうと屋敷へ脚を向けた、その時─
「きゃああ…!」
「逃げろ!」
聞こえてきた悲鳴に結莉乃と眞秀は顔を見合わせ頷くと、悲鳴の方へ走り出した
結莉乃
「これ…。おじさん!」
町人
「あぁ、結莉乃ちゃん!無事だったかい」
二人が到着すると甘味処へ向かう前に言葉を交わした町人を見付け、結莉乃が声を掛けると町人は二人が無事だった事に安堵の表情が僅かに覗く
眞秀
「何があったんだ?」
町人
「異形だよ!異形が現れて俺達の店を壊しやがったんだ…!」
結莉乃
「え!?」
町人
「危ないから君も逃げるんだ」
結莉乃が戦うという事を当然、考えていない町人は彼女へ声を掛ける。異形退治を専門とする眞秀が居るため彼に任せろと、そういう事だろう。
だが、結莉乃は肩を掴んだ町人の手を取り
結莉乃
「私なら大丈夫です。安全な所へ逃げて下さい」
町人
「何をっ」
眞秀
「結莉乃は大丈夫だから。な?」
眞秀の言葉に慌てていた町人は幾分か落ち着きを取り戻し数回、振り向いたものの町人は逃げていった