第6章 慣れは非日常を日常へ変えていく
木の温かみがある店内の座敷で二人向き合って座る
結莉乃
「眞秀くんのおすすめは?」
眞秀
「餡蜜だな」
その答えを聞いて結莉乃は内心で悶えた。
ゲーム中に知っていた答えを貰えて嬉しくなってしまったのだ
結莉乃
「じゃあ、餡蜜にする!」
眞秀
「団子も美味いから頼もう」
結莉乃
「うん」
ふわふわとした空気を纏った看板娘であろう女性が注文をとってくれ、届くのを二人は会話をしながら待っていると餡蜜と団子にお土産のおはぎが届いた。
挨拶をしてから結莉乃が餡蜜を口に含むと、控えめで優しい甘さが咥内に広がり幸せそうに頬を緩めた。それを正面で見ていた眞秀も気が付けば表情を緩めていた
眞秀
「美味いか?」
結莉乃
「すっごく美味しい…!」
眞秀
「良かった。…結莉乃、今日ずっとにこにこしてるな」
結莉乃
「え、そうかな?」
眞秀
「ん、いつもよりしてる」
結莉乃
「甘味処、行けるの楽しみにしてたし…美味しいから嬉しくて」
眞秀には告げられなかったが、結莉乃は端末でやっていたイベントを自身が体験出来ているのが嬉しくて常に表情筋が緩んでいるのかもしれない。
眞秀
「結莉乃も此処に馴染んだな」
頬杖をついた眞秀は、餡蜜を頬張る結莉乃を優しく見詰めながらそう呟いた。町の人に話し掛けられるのもそうだし、屋敷での役割の事もそうだ。
そんな事を言われると思っていなかった結莉乃は、きょとんとしながら首を傾げる
結莉乃
「そうかな?…でも、未だに着物は着れないよ」
眞秀
「良いんじゃねぇか?徐々に出来るようになる」
結莉乃
「そうだね」
眞秀
「結莉乃が来て、俺等の時間が動いた気がするんだ」
結莉乃
「え…?」
最後の一口を食べ終えて口を拭っていた結莉乃は、何の事か分からなくて不思議そうに眞秀を見詰める